板前FP雑記帳

働く人、生活者のためのファイナンシャル・ファイナンシャル

「ギルド」に「無尽」、そして「ハレー彗星」と生命保険の始まり

リスクマネジメントとしての生命保険

リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理して被害や損失の回避または低減を図るプロセスのことを言います。

ですが変化が激しく予測の難しい現代社会では、個人においてもリスクマネジメントの必要性があると感じている方も多いのではないでしょうか?

 

そして私たちの生活の中で最も身近なリスクマネジメントが、生命保険という制度だと思います。

 

リスクマネジメントはその手法において、「損失の発生頻度とその大きさを削減」するためのリスクコントロールと「損失を補てんするための金銭的な手当て」をするためのリスクファイナンシングとに大別されます。

 

さらにリスクファイナンシングでは、リスクによる損失を自ら負担する保有と第三者に負担させる移転とに大きく分かれます。

身近な例では、将来に備えての積立貯蓄は「保有」。そして「移転」の最も代表的な手法にあたるのが、生命保険です。

 

「ギルド」

 

中世ヨーロッパでは、商工業に携わる人々がギルドという同業者組合を作り、組合員の冠婚葬祭の費用などを分担しあっていました。

商人たちが商業利益と相互扶助のために結成したのが商人ギルドであり、やがて商人たちが都市の政治を掌握し独占するようになる中、手工業者たちが自分たちの利益や権利を守るために結成したのが同職ギルドです。

 

そのギルドが、生命保険の起源であるとする説があります。

 

その後歴史は進み17世紀の終わり頃、英国のセントポール寺院において香典前払い組合が結成されました。

牧師たちが組合を作って毎月一定の金額を払い込み、組合員の死亡に備えるという制度です。

 

ですが、この香典前払い組合はわずか10年ほどで立ち行かなくなってしまいます。

 

「掛け金を払い込んだ期間にかかわらず受け取る金額を同額とする」制度であったので、加入した年齢や加入期間によってかなりの不公平が生じます。

その結果、若い牧師たちの中で離脱者が続出してしまったのです。

 

ハレー彗星と生命保険

 

「ハレー彗星」は、天体観測に興味がない方でもご存知の方も多いと思います。

最初の観測記録は紀元前まで遡るとされ、それが同じ彗星の回帰であることを発見したのが英国の天文学者エドモンド・ハレーです。

 

そのハレー氏が作った生命表が、近代的な生命保険の礎となっているのです。

 

ルネッサンス以降、高名な学者たちによって数多くの法則や定理が発見されましたが、その一つに大数の法則というものがあります。

一つ一つは偶発的に見えるできごとも、多くの事例を集めて統計をとると一定の法則が見られる、というものです。

 

例えば、サイコロを6回振るとします。その場合サイコロの「1」の目が出る確率は、6分の1とは限りません。

ですが、サイコロを振る回数(サンプル数)を増やせば増やしていくほど「1」の目が出る確率は6分の1に近づいていきます。

 

ハレー氏はこの大数の法則が人の寿命にも当てはまるとして、特定の年齢層や性別における死亡率や平均余命を示した生命表を作成したのです。

 

その後、英国の数学者ジェームス・ドドソンによって「生命表による死亡率を根拠として、加入時の年齢によって保険料が決まり、払込期間を通して保険料が一定額になる仕組み(平準保険料方式)」が考え出されました。

 

このようにして近代的生命保険制度は確立され、現在に至ります。

 

日本における生命保険

 

日本では自然発生的に相互扶助の仕組みが各地に存在していましたが、鎌倉時代になると「頼母子(たのもし)」や「無尽(むじん)」といった制度が歴史的文献の中から確認されるようになります。

 

金銭の融通を目的とする民間互助組織。一定の期日に構成員が掛け金を出し、くじや入札で決めた当選者に一定の金額を給付し、全構成員に行き渡ったとき解散する。鎌倉時代に始まり、江戸時代に流行。頼母子。無尽講。(デジタル大辞泉より)

 

そしてわが国に最初に保険制度を紹介したのは、1867年(慶應3年)に福沢諭吉が著した「西洋旅案内」だとされています。

その時代は「保険」という言葉そのものがなく、福沢諭吉は「災害請合」という訳語を作り出して生命保険・損害保険・海上保険の仕組みを紹介しています。

 

ちなみに福沢諭吉はこの「西洋旅案内」の舞台となったアメリカ行でたくさんの洋書を買って帰国したのですが、道中その荷物を海上保険にかけたという事実があるそうです。

 

保険の歴史は助け合いの歴史

 

人が社会を形成し生きてく上で発生した相互扶助の仕組みが、近現代の生命保険制度へと発展していったわけですね。

こうして見てみると、社会や生活は変わっていく中でも、保険の歴史は人々がお互いのリスクを負担し合う助け合いの歴史なんだということが良く分かります。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

遺族年金について(2)遺族厚生年金

遺族年金の「2階」部分、遺族厚生年金

 

このブログでも何度か言及していますが、「日本の年金制度は2階建て」と言われます。すべての対象者が加入する国民年金が1階部分、そして会社員や公務員などが加入する厚生年金が2階部分というわけです。

 

遺族年金においては前回のブログで解説した遺族基礎年金が、その1階部分にあたります。

そしてその2階部分が、今回解説する遺族厚生年金です。

 

遺族年金について(1)遺族基礎年金 - 板前FP雑記帳

 

遺族厚生年金の支給対象

 

厚生年金に加入していた人が死亡したときに、その人に生計を維持されていた遺族(遺族基礎年金と同様に年収850万円未満の年収要件あり)に支給されるのが遺族厚生年金です。

遺族厚生年金では、遺族基礎年金よりも色い範囲の遺族が支給対象となります。次の遺族のうち、最も優先順位の高い遺族が給付を受けることができます。

  1. 配偶者、または子
  2. 父母
  3. 祖父母

 

支給対象となる遺族にはそれぞれ年齢などの要件があります。

 

・「子」「孫」

18歳になる年度末の3月31日までの人、または障害等級1級・2級の状態にある20歳未満の人。

・「30歳未満の子のない妻」

受給できるのは5年間のみ。

・「夫」「父母」「祖父母」

厚生年金の加入者が死亡した時点で55歳以上であること。受給開始は60歳から。

(55歳未満の夫が妻の扶養に入っていて子供がいる場合、子供に支給される。)

 

遺族厚生年金の受給要件

 

それでは続いて、亡くなった人に関する要件について見ていきたいと思います。

 

「短期要件」

  1. 厚生年金の被保険者の死亡
  2. 厚生年金の被保険者期間中に初診日のあった病気や怪我が原因で、初診日から5年以内に死亡
  3. 障害等級1級・2級の障害厚生年金の被保険者の死亡

「長期要件」

 4. 厚生年金の受給権者または厚生年金の受給資格期間が25年以上の人の死亡   

 

遺族厚生年金の受給要件では、本来必要な25年以上の加入期間がなくても受給権が発生する短期要件と、25年以上の加入期間を満たすものを長期要件とがあります。

この短期要件のうち、1と2については、亡くなった日の前日までに保険料を納めた期間(保険料免除期間を含む)が被保険者期間の3分の2以上であることという納付要件があります。

(※2026年3月31日までは、死亡した前々月の直近1年間に保険料の未納期間がなければ要件を満たすとみなされる特例があります。)

 

遺族厚生年金の年金額

 

遺族厚生年金の額は、老齢厚生年金の報酬比例部分(2階部分)の4分の3となります。遺族基礎年金の額は子どもの数に応じて一律ですが、遺族厚生年金では少し複雑な計算で受給額が算出され、また加入者の収入によって年金額が変わります。

 

遺族厚生年金額の計算

 

  1. A=平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間
  2. B=平均標準報酬月額×5.481/1000×2003年4月以後の被保険者期間
  3. (A+B)×3/4

 

短期要件による遺族厚生年金では、被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなして計算します。

 

それでは過去のFP試験の問題から、例を出して計算してみたいと思います。

 

例)

  • 1977年1月12年まれ
  • 2023年5月28日死亡(46歳)
  • 2003年3月以前の被保険者期間=48月
  • 〃の平均標準報酬額=25万円
  • 2003年4月以後の被保険者期間=241月
  • 〃の平均標準報酬額=38万円

 

A=25万円×7.125/1000×48月 = 85500円

B=38万円×5.481/1000×241月 = 501949.98円

 

A+B = 587449.98円(報酬比例部分)となります。

 

ここで300月のみなし計算では、まず報酬比例部分の額を実際の被保険者期間(48+241=289)で割って1ヶ月当たりの金額を出し、その数字に300をかけて300月加入していた場合の金額を算出します。

 

587449.98÷289×300 = 609809.6676

 

となり、その4分の3ですので

 

609809.6676×3/4 = 457357.2505

 

円未満を四捨五入して45万7357円が、遺族厚生年金の額となります。

 

少しわかりにくい計算式ですので、自分で遺族厚生年金の額を算出するのは手間だと思います。

生命保険各社のサイトで年齢や家族構成ごとの支給額のシュミレーションをみることができますし、年金事務所に問い合わせると、その点は親切に教えてくれます。

 

日本年金機構

「全国の相談・手続き窓口」

https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/

 

中高齢寡婦加算

 

遺族厚生年金では、夫が亡くなった時に45歳以上65歳未満で子のない妻には、年額61万2000円の中高齢寡婦加算が加算されて支給されます。

 

65歳以上で老齢厚生年金の受給権者

 

それでは65歳以上で老齢厚生年金の受給権者が遺族厚生年金を受ける場合はどうでしょうか。

 

2007年4月以降、遺族厚生年金の額が自らの老齢厚生年金の額よりも多い場合には、自らの老齢厚生年金が全額支給され遺族厚生年金については自らの老齢厚生年金に相当する額が支給停止となります。

 

というわけですので、自分の老齢厚生年金の額の方が多い場合は遺族厚生年金は全額支給停止となります。

 

遺族年金を把握して、必要な補償とライフプランニングを

 

ここまで遺族年金について解説してきました。

遺族年金には子ども・子どもがいる配偶者が受け取ることのできる遺族基礎年金(1階部分)と、子どもがいなくても受け取ることのできる遺族厚生年金(2階部分)があります。

 

家族構成・年金への加入期間・収入によって受け取ることのできる年金額が変わります。

まずはおおまかでも良いのでもしもの時の年金額を把握することが、保険などの必要な補償の選択や将来に向けての貯蓄・投資の目標額など、ライフプランニングの参考になるかと思います。

 

このブログが少しでもお役に立てれば幸いです。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます。

 

 

 

 

遺族年金について(1)遺族基礎年金

年金は歳をとってからもらうもの?リスクに備えるための年金

年金は歳をとってから受け取るものと考えてしまいがちです。

その考え方自体は間違いではありませんが、それだけではないよというのが今回のブログです。 

 

公的年金には、人生における様々なリスクに備えるための役割があるのです。

 

例えば病気や怪我などで一定の障害状態になった時にされる障害年金、そして本人が死亡したときに残された遺族に支給される遺族年金があります。

 

どんなに気をつけていても、不慮の事故や病といったリスクを負う可能性をゼロにすることはできません。年金にはそうした人生におけるリスクに対して社会全体の支え合いによって備える保険としての機能があるのです。

 

遺族年金は、残された家族の暮らしを支える大切な生活原資です。またもしもに備えて生命保険の加入を検討する際にも、遺族年金への理解があれば必要な補償額を算出するための一助となるのではないでしょうか。

 

遺族年金の仕組みについて解説

 

遺族年金も、他の年金と同様に2階建てになっています。1階部分にあたる国民年金の加入者が死亡したときに遺族に支給される遺族基礎年金、2階部分の厚生年金に加入する会社員や公務員の方が亡くなったときに遺族に支給される遺族厚生年金があります。

 

それぞれ見ていきますが、今回のブログではまず遺族基礎年金について解説していきます。

 

遺族基礎年金の支給対象

 

遺族基礎年金は国民年金に加入していた人が亡くなった時に、その遺族に支給される年金です。

支給対象となるのは亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」となります。

 

  • 生計を維持・・・生計を同じくしていたことに加えて、遺族の年収が850万円未満であることという年収要件があります。
  • 子・・・年金上で「子」とは、18歳になった年度の末尾(3月31日)までにある人、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある人のことをいいます。

 

遺族基礎年金の額

遺族基礎年金の受取額は、老齢基礎年金の満額を基本として、そこに子の数に応じた加算額を加えた額となります。

2024年度の老齢基礎年金の満額は年額816,000円です。

 

(1)子のある配偶者が受け取る場合

 

子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取る年金額は、基本年金の81万600円に、子の数による加算額を加えた額となります。

第1子〜第2子が1人につき23万4800円、第3子以降が1人につき7万8300円が加算されます。

 

  1. 子が1人の配偶者・・・年額105万800円(81万6000円+23万4800円)
  2. 子が2人の配偶者・・・年額128万5600円(81万6000円+23万4800円+23万4800円)
  3. 子が3人の配偶者・・・年額136万3900円(81万6000円+23万4800円+23万4800円+7万8300円)

すべての「子」が18歳になりその年度の末尾(3月31日)を迎えると、「子のある配偶者」は遺族基礎年金の受給権がなくなります。

 

(2)子が受給する場合

 

子が遺族基礎年金を受給する場合、基本年金の81万6000円に子の数による加算額を加えた総額を子の数によって等分に割って受給される仕組みになっています。

 

  1. 子が1人・・・年額81万6000円
  2. 子が2人・・・年額105万800円(81万6000円+23万4800円)、一人あたり52万5400円
  3. 子が3人・・・年額112万9100円(81万6000円+23万4800円+7万8300円)、一人あたり37万6366円

例えば長男が18歳になり年度末を迎えた時は、新たに少なくなった「子」の数で年金額が計算されて、残りの「子」に等分に支給されることになります。

 

遺族基礎年金の受給要件

 

遺族基礎年金では、亡くなった人の範囲についても保険料の納付期間について一定の要件があります。確認していきましょう。

 

  1. 国民年金の被保険者(国民年金に加入している人)、あるいは国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人(日本在住)が死亡した場合、保険料納付済期間・免除期間が合わせて加入期間の3分の2以上であること。
  2. 老齢基礎年金の受給権者であった人、受給資格を満たしていた人が死亡した場合、受給資格期間が合わせ25年以上であること。

ただし、2026年3月末までは特例として「65歳未満で、死亡した前々月までの直近1年間で保険料の未納がないこと」という条件に当てはまる場合、保険料の納付に関する要件を満たすものとみなされます。

 

  • 「老齢基礎年金の受給権者」・・・65歳以上で、受給資格期間が10年以上の人。
  • 「受給資格期間」・・・年金を受け取るために必要な加入期間のこと。保険料納付済期間や保険料免除期間などを合算した期間。

 

老齢基礎年金を受け取ることができるのはあくまでも「子のいる配偶者」か「子」ということで、子のない配偶者など対象からこぼれ落ちてしまう人には条件によって寡婦(夫と死別した妻)年金または死亡一時金などが支給されます。

 

今回のブログでは主に老齢基礎年金の仕組みについて解説してきました。

次回は遺族厚生年金の仕組みについて解説する記事を書こうと思います。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

働きながら、年金も―在職老齢年金

歳をとっても働きたい

2022年の「就業構造基本調査」によれば就業者における65歳以上の高齢者の割合は13.5%、働いている人たちのうち実に7人に1人が高齢者ということになります。

さらに高齢者の就業率は25.2%、さらに65歳から69歳の年代では52%にのぼります。

 

歳をとっても働きたいと考える人が増えていることは事実で、その理由は「収入が欲しいから」が全体の45.4%で最も多く、「働くことは体に良い・老化の防止」「仕事が楽しい・これまでの経験や知識を生かしたい」などの理由がつづきます。

 

年金だけでは老後の生活が不安、経済的な安心が欲しい。

そう考える人達が、働きながら年金を受け取ることができる。その制度が在職老齢年金です。

 

ですが在職老齢年金というと「働きながら年金ももらえる」というよりも、「働いていて収入があると年金が減額されてしまう」という負のイメージを持つ方が多いように思います。

そこで今回のブログ記事ではその減額調整についても解説していきたいと思います。

 

在職老齢年金

在職老齢年金とは、会社員として(厚生年金の被保険者として)働きながら、厚生年金を受け取ることができる制度です。自営業者など厚生年金に加入されていない方は対象外となります。

 

65歳から(繰り上げ受給や特別支給の老齢厚生年金を受ける場合は60歳から)70歳に達するまでの間に、厚生年金に加入しながら年金を受け取ることになるので保険料の負担義務があります。

70歳以上では厚生年金の加入資格を失うことになるので保険料の納付義務はありません。

 

在職老齢年金の支給停止

 

在職老齢年金では年金と賞与を含む給与の合計額によって、年金の一部または全額が支給停止(減額)

となることがあります。

基本月額総報酬月額相当額の合計額が50万円を超える場合、支給停止の対象となります。

  • 基本月額=老齢厚生年金の月額。例えば老齢厚生年金の年金額が120万円(年額)の場合、120÷12=10となり基本月額は10万円です。
  • 総報酬月額相当額=毎月の賃金+1年間で受け取った賞与÷12となります。

 

なお、この50万円という減額調整額は令和6年度のもので、毎年度変化するので注意が必要です。

 

少しでも生活を豊かにしようと働いているのに、年金が減額されては元も子もないですよね。どのような計算で年金が減額調整されるのか具体的に見ていきます。

 

①基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円以下の場合

→支給停止額=0円(全額支給)

 

②基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円を超える場合

→支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額−50万円)÷2

となります。

 

例えば、年金の基本月額が20万円、総報酬月額相当額が35万円の場合

(20万円+35万円-50万円)÷2

となり、毎月2万5千円(年間30万円)が減額されてしまうことになります。

 

自分たちのような普通の給与所得者にとって、月2万5千円はけっこう大きいです。お得なプランがあれば旅行にもいけますし、何回飲みに行けるんだろうとか考えてしまいます(笑)。

 

なお、減額調整はあくまでも老齢厚生年金を対象にしているので老齢基礎年金は全額支給となります。

 

在職定時改定制度

在職老齢年金制度によって厚生年金に加入しながら年金を受け取っていた場合、退職して1ヶ月を経過した時には退職の翌月分から、70歳に達して厚生年金の加入資格を失った時には70歳に達した翌月分から、それまで納めた厚生年金保険料が年金額に反映されることになります。その仕組みを退職改定といいます。

 

加えて2022年度に新たに導入された在職時定時改定制度では、65歳から70歳未満の方が9月1日の時点で厚生年金に加入して働いていた場合には、翌月の10月分から年金額が見直されるようになりました。

年金を受け取りながら働いて納めた保険料が、1年毎に受け取る年金額に反映されるようになったというわけです。

 

これは嬉しいですよね。働く意欲が湧く人も多いのではないでしょうか。

ただし受け取る年金額が増えれば年金の基本月額に反映されるので、既に述べた通り総報酬月額相当額と合わせて一定額を超えると厚生年金の減額調整の対象となってしまうので注意が必要です。

 

厚生年金の適用事業所で65歳を過ぎて働く場合、働きながら年金を受け取るのか、あるいは繰下げ受給をするのかなど選択は様々だとは思いますが、いずれにせよ生活設計をしっかりと作っていく必要があると思います。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

私的年金のポータビリティ

ポータビリティとは

前回のブログ記事でiDeCo個人型確定拠出年金について解説しました。私的年金や企業年金は老後の生活原資となる資金を積み立て、自ら年金の「2階部分・3階部分」を築くための制度です。

 

では企業年金やiDeCoで資産を運用していた人が転職したり退職したりした場合、それまで積み立てた資産はどうなるのでしょうか?

 

その場合、転職先の実施している企業年金・またはiDeCoに資産を持ち運んで移換することができます。

 

この制度を私的年金のポータビリティといいます。

あくまでも老後の資産形成が目的なので、このようにして継続性を担保する必要があるわけです。

それでは今回は私的年金のポータビリティについて解説していきたいと思います。

 

その前に主な企業年金・私的年金について少しおさらいします。

 

 

 

確定給付企業年金とは

 

事業主が従業員の受取る年金額を約束し(確定給付)、その支給額に基づいて掛金が決まります。

掛け金は原則として事業主が負担し、運用の責任も事業主が負います。

「規約型」「基金型」の2種類があります。

 

確定拠出年金とは

 

預貯金(定期)・保険商品・投資信託などの金融商品を対象に資金を拠出し積み立て、その積み立てた資産と金融商品の運用益を将来年金などとして受け取ることができる制度です。

確定拠出年金には「企業型」と「個人型」があります。

 

企業型確定拠出年金(企業型DC)では企業が掛け金を負担し、運用の指図とそのリスクは従業員が負います。運用した金融商品の価格変動によって、元本割れなどのリスクあります。

対して個人型確定拠出年金(iDeCo)は、加入者が自ら資金を拠出して運用します。

 

どちらも共通するのは、加入者が自らの責任で運用し、その運用実績次第で将来給付を受ける年金などの原資となる資産が増減する、ということです。

 

それでは本題に入ります。

私的年金を他の年金制度へと移換するケースについて、1つずつ見ていきます。

 

確定給付企業年金の移換

 

確定給付企業年金→確定給付企業年金

転職先の確定給付企業年金に、移換を受け入れる規約がある場合は可能です。

 

・確定給付企業年金→企業型DC 

退職する確定給付企業年金の担当者(「規約型」の場合は退職する企業の人事部など、「基金型」の場合は企業年金基金)に申し出て、脱退一時金を企業型DCへと移換する手続きを行います。

確定給付企業年金の資格を喪失した日から一年以内

 

・確定給付企業年金→iDeCo

同じく退職する確定給付企業年金の担当者に申し出て、脱退一時金をiDeCoへと移換する手続きをとります。こちらの手続きも一年以内に行う必要があります。移転先の金融機関に「厚生年金基金・確定給付企業年金移換申出書」を提出します。

 

企業型DCの移換

 

・企業型DC→確定給付企業年金

転職先の確定給付企業年金に、企業型DCからの移換を受け入れる旨の規約がある場合にのみ可能です。

 

・企業型DC→企業型DC

企業型DCを実施している企業へと転職する場合、加入資格の対象者はそれまで積み立てた資産を移換することができます。移換手続きは転職先の担当部署を通して行うのが一般的です。

「個人別管理資産移管依頼者」を記入して転職先の担当部署に提出すると、財産を管理する会社同士でその後の手続きが行われます。

それまで積み立てた資産は一旦現金化され転職先の用意する金融商品へと自動配分されるので、転職前に運用していた商品に継続して投資できるとは限りません。

もし配分された金融商品が自分の意思にそぐわない場合には、現在運用している金融商品を売却し他の金融商品へと買い替えることが出来ます。これをスイッチングといいます。

この場合にも、転職先の企業の定めたものの中から新たに運用する金融商品を選ぶことになります。

 

・企業型DC→iDeCo

企業型DCに加入していた人が、企業型DCを実施していない企業へと転職した場合。あるいは退職して自営業者となる・専業主婦(主夫)となる場合は、それまで積み立てた資産をiDeCoへと移換して、継続して資産を運用することができます。

 

企業型DCでは、その職場を退職すると加入資格を失うことになります。加入資格を失った翌月から起算して6ヶ月以内に、転職先の企業型DCやiDeCoへと資産を移換する必要があります。

この手続きを怠った場合、それまで積み立てた資産は自動で現金化されたうえ国民年金基金連合会へと移換されてしまいます(自動移換)

 

自動移換された資産は現金化されているので運用指図することができず、そのままの状態では60歳になっても引き出すことができません。

引き出すためには手数料を払ってiDeCoへと改めて移換する必要がありますが、国民年金基金連合会へと自動移換されていた期間は確定拠出年金の通算加入期間としてカウントされないため、受け取りが60歳よりも遅くなります可能性があります。

 

さらにその国民年金基金連合会へ自動移管された場合の手数料がまず4,348円、自動移換から4ヶ月後に毎月52円、自動移換から改めて企業型DCに移換する場合は1,100円、iDeCoに移換する場合は3,929円となります。

このように本来は負う必要のない手数料や手続きを負担しなければならなくなります。退職した場合の企業型DCの移換手続きは速やかに行うことをお勧めします。

 

iDeCoの資産を他の私的年金へ

 

・iDeCo→確定給付企業年金

iDeCoの加入者であった人が確定給付企業年金を実施する会社に転職した場合、「iDeCoからの移換を受け入れることができる」という旨の規約があれば、iDeCoから確定給付企業年金へと資産を移換することができる場合が有ります。

 

・iDeCo→企業型DC

iDeCoの加入者である人が働いている会社が企業型DCを導入した、あるいは企業型DCを実施している会社へと転職・就職した、そのような場合にはiDeCoから企業型DCへと資産を移換します。

 

まず、それまでiDeCoを管理していた金融機関で加入資格喪失の手続きを行います。その後に転職・就職先の会社でiDeCoの資産を企業型DCへと移換する手続き、という流れになります。

この場合、それまで積み立てた資産は一旦解約されて会社側が用意した金融機関へと配分されることになります。企業型DC→企業型DCの場合と同様です。

 

また会社によっては企業型DCとiDeCoとの併用を認めている場合もあります。その場合は以前の職場で登録していた登録事業所の変更手続きが必要です。

企業型DCとiDeCoの併用には、上限金額や企業型DCのマッチング拠出を利用していないことなど、いくつか条件がありますので確認が必要です。

 

 

少し長くなってしまいましたが、今回は私的年金のポータビリティについて解説させて頂きました。少しでも参考になれば幸いです。

 

ここまてお読みいただきありがとうございました。

iDeCo 個人型確定拠出年金

私的年金

 

「日本の年金制度は2階建て」といわれます。20歳以上60歳未満の全ての方が加入する国民年金が1階部分、その上に2階部分として民間企業の会社員の方や公務員・教職員の方が加入する厚生年金があります。

 

そうした公的年金に対して、私的年金というものがあります。任意で加入し、公的年金の上乗せして給付を受けるための制度です。将来に備えて自ら年金の「2階部分・3階部分」を作ることができます。

企業年金であったり、第一号被保険者のための国民年金基金、民間の保険会社の個人年金保険などがそれにあたります。

 

その中でもiDeCo個人型確定拠出年金は2017年に加入資格の対象者が拡大され、老後の資産形成のための私的年金として注目度が増しています。

この記事ではiDeCoの概要・特徴とメリット・デメリット、また同じく資産運用の制度としてよく比較されるNISAとの違いなどについて解説していきたいと思います。

 

iDeCoとは

iDeCo個人型確定拠出年金では、加入を希望する対象者が金融機関に自ら申込み・手続きを行い、運用商品を決めて掛け金を拠出します。

 

iDeCoでは複数の金融機関に複数の口座を持つことはできず、選択できるのは1金融機関かつ1口座のみです。ただし、途中で金融機関を変更することは可能です。

 

 

取り扱う金融商品は金融機関ごとで品揃えが変わりますが、各金融機関はリスクやリターン特性の異なる3以上35以下の金融商品を提示することになっています。

 

毎月の掛け金は5,000円から、1,000円単位で設定できます。運用対象となる商品は投資信託、定期預金などの預貯金、個人年金保険など保険商品です。

 

その掛け金と運用益の合計を将来の給付として受け取ります。よって運用実績によっては資産が目減りする可能性もあります。

 

加入対象者と掛金の上限

 

iDeCo加入できるのは、国民年金に加入している20歳以上60歳未満の方と厚生年金に加入している65歳以下の方ですが、その職業よって掛金の上限が変わります。

 

  • 自営業者の方・・・国民年金基金と国民年金の付加保険料とあわせて月額68,000円まで。
  • 専業主婦の方・・・月額23,000円まで。
  • 会社員の方・・・月額12,000円23,000円まで。(企業年金の加入状況によって変わります)
  • 公務員の方・・・月額12,000円まで。

 

↓国民年金の被保険者の区分についてはこちら

年金について・人は誰でも歳をとる - 板前FP雑記帳

 

 

また、自分が加入資格に該当するかどうか・掛金の上限は公式サイトの「加入診断」で簡単に見ることができます。

iDeCo(イデコ)をはじめるまでの4つのステップ|加入希望者の方へ|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

 

会社員がiDeCoを始める場合

 

基本的にはiDeCoを始めるには、本人確認書類と基礎年金番号を準備して銀行や証券会社などの金融機関に申し込みます。

 

ただ、会社員の場合には勤務先に事業所登録申請書兼第二加入者に係る事業主の証明書という書類を記入してもらう必要があります。

この書類によって65歳未満の国民年金の被保険者であるか、企業年金の有無と加入状況など、iDeCoの加入資格があるということを事業主に証明してもらうというわけです。

 

また事業主の承認があれば、iDeCoの毎月の掛金を給料天引きにより事業主経由で納めることもできます。その場合、年末調整や確定申告が不要になります。勤務先に確認してみましょう。

 

iDeCoの給付

 

iDeCoの給付には、「老齢給付」「障害給付」「死亡一時金」「脱退一時金」があります。

 

老齢給付は原則として60歳から受取ることができます。しかしこれには最初の掛金を拠出してから10年以上経過していることという条件があります。

10年以上経過していない場合には、給付の受取が61歳以降にずれ込んでしまうことになります。

 

  • 8年以上10年未満→61歳から
  • 6年以上8年未満→62歳から
  • 4年以上6年未満→63歳から
  • 2年以上4年未満→64歳から
  • 1ヶ月以上2年未満→65歳から

 

となります。  

 

障害給付・・・疾病によって一定の障害状態になったときに受取ることができます。障害に認定され給付を受取る時の年齢や加入期間は問われません。

 

死亡一時金・・・加入者や加入していた方が亡くなられた場合に、年金資産を全て売却して、遺族が一時金を受取ることができます。

 

脱退一時金・・・以下の全ての条件を満たしている場合には、脱退一時金を受け取ることができます。

  1. 60歳未満
  2. 企業型DCに加入できない
  3. iDeCoに加入できない
  4. 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)ではない
  5. 障害給付の受給者ではない
  6. 企業型DCの加入者及びiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内であること,又は個人別管理資産額が25万円以下であること
  7. 企業型DC又はiDeCoの資格を喪失してから2年以内であること

 

こうして見ると脱退一時金を受け取れるのは、かなり限られたケースになりますね。

 

税制優遇措置

 

iDeCoに加入するメリットとして挙げられるのが税制優遇です。

 

  1. 掛金が全額所得控除の対象になり、所得税と住民税が軽減される。
  2. 運用益も非課税。通常、株式や投資信託などで得た運用的には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの場合は非課税となります。
  3. 受け取る給付も税額控除の対象になります。年金として受け取る場合には公的年金控除、一時金として受け取る場合には退職所得控除。

 

となります。

 

iDeCoのデメリット

 

資産形成のためにiDeCoに加入した場合のデメリットには、まず積み立てた掛け金は60歳まで引き出すことができないということで挙げられます。

基本的に老齢給付として受け取ることを目的にしているからです。

 

それからもちろん、運用している金融商品の価格の変動により元本割れのリスクもあります。

 

ただ投資で資産を形成しようとすれば運用実績による元本割れのリスクがあるのは当然のことですし、60歳まで引き出せないというのも、そもそもの目的が「老後のための資産形成」ですので安易に中途解約できないというのはメリットと捉えることもできるかもしれません。

 

個人的にはiDeCoへの加入をためらわせる大きなデメリットは手数料かなと思います。

iDeCoではまず加入時手数料そして口座管理手数料(事務手数料・資産管理手数料・運営管理手数料)、さらに給付を受け取る際にも納付事務手数料がかかります。

 

なのである程度の金額を掛金とする場合はともかく、毎月数千円単位の少額な掛金で積み立てた場合には、掛金に対する手数料の割合が大きくなってしまいます。

 

税制メリットとにらめっこして吟味する必要がありますね。

 

NISAとの比較

 

資産形成のツールとしてよく比較されるiDeCoNISAですが、ここで具体的な特徴の違いを見ていきます。

 

  1. まずiDeCoは掛け金の積立期間は最長65歳まで・給付の受け取りは原則60歳からとなっていますが、NISAでは資金を拠出する期間も積み立てた資産を引き出すタイミングも自分で選ぶことができます。
  2. 掛け金の上限もiDeCoの場合には職業などで上限がありますが、NISAの場合は「つみたて投資枠」「成長投資枠」の範囲内であれば自らの設定した金額で投資・積み立てが可能です。
  3. iDeCoは毎月の掛け金や給付金も税額控除の対象になりますが、NISAの場合非課税となるのは運用益のみ。節税メリットはiDeCoの方が大きいと言えます。

 

それでは筆者の場合

 

ここまで長々とiDeCoについて解説してきましたが、実は自分はiDeCoに加入していません・・・(笑)

 

おいおい、と思われるかもしれませんが自分なりの理由と投資計画があるのです。

 

iDeCoに現在加入していない大きな理由は、「60歳まで引き出すことができない」からです。

それというのも、あの新型コロナウイルスによる社会変動を経験したことが大きいですね。

疫病や災害によって、自分の職業がまた或る日突然、社会にとって「不要不急」とされてしまうかもしれないという不安。

 

なので、まずはNISAで「1年くらいは夫婦と猫たちで暮らしていけるくらいの原資」を貯めて、それからまた私的年金など老後の資産形成についての方法を見直す、という方針でコツコツ積み立ててます。

 

私の場合貯蓄は目的別に行っていますが、「将来・老後のため」の積み立て金が毎月2万円です。

そして毎月の給与の手取りが約34万円ほど。緊急時は節約してその8割で暮らすとしてだいたい1ヶ月で27万円、1年間で320万円ちょい。

 

↓金融庁「つみたてシュミレーター」

https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/tsumitate-simulator/

 

ちなみに毎月2万円を年利3%で積立・運用できたとしても、11年以上かかります。

 

・・・・・明日からまた仕事頑張ろ。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 

年金について・人は誰でも歳をとる

将来への不安

 

誰でも歳をとります。生きていれば、老後は必ずやってきます。自分は今40代半ばですが、将来のことを考えるといつも、ぼんやりとした不安がつきまといます。

 

 

なぜ不安になるのか?

その不安の原因の最たるものが、老後の生活資金の原資である公的年金への不信感ではないでしょうか?

 

いたずらに不安を煽るのは良くありませんが、「年金だけでは将来生活していけるのか不安だ」という人が世の中ではほとんどで、既に投資や貯蓄などの資産形成を始めていたり、関心をもってリサーチしている人は実際に多いと思います。

 

例えば国民年金の老齢基礎年金の満額は今年度で約6万8千円です。よほど環境的に恵まれた人でない限り、この年金額で暮らしていくのはなかなかに厳しい。

ましてや年金を満額で受け取れる人がどれだけいるのか、実際に受取る年金額はもっと少ない可能性もあります。

 

「やっぱり年金なんて頼りにならない」

「保険料を払うのも馬鹿馬鹿しい」

そう感じる人も多いかもしれません。

 

ですが、その頼りない年金だって、有ると無いとでは老後の生活が大きく変わります。

感情的になって自暴自棄になりそうなとき、学ぶことや知識を得ることが助けになる。そうであってほしいと思います。

 

日本の年金制度

 

「老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする」(国民年金法第一条より)

 

我が国の年金は国民皆年金といって、原則として20歳以上60歳未満のすべての国民が年金制度に加入することになっています。

そうすることで安定した保険集団を形成し、リタイヤされた方や障害を負った方、亡くなられた方の遺族などの暮らしを社会全体で支えていく、そのための国民皆年金制度であるというのが日本の年金制度の特徴のひとつ。

 

そしてもうひとつの特徴としてあげられるのが、日本の年金制度は2階建てであるということ。

すべての対象者が加入する国民年金が1階部分、その上に民間企業の会社員や公務員などが加入する厚生年金が、2階部分としてあります。

 

国民年金の被保険者は、職業などにより第一号から第三号までに分類されます。

  • 第一号被保険者・・・自営業者や学生、無職の方など20歳以上60歳未満で第二号や第三号に該当しない方は、第一号被保険者となります。
  • 第二号被保険者・・・民間企業の会社員や公務員、あるいは教職員など70歳未満で厚生年金に加入されている方は、第二号被保険者です。
  • 第三号被保険者・・・主婦・主夫など第二号被保険者と生計を共にして扶養されている配偶者の方は、第三号被保険者となり保険料の負担はありません。

 

現在の公的年金だけでは将来の生活が苦しいという第一号被保険者や第三号被保険者の方、もう少し安定した老後を送りたいと考える第二号被保険者の方が、任意で加入し自ら年金の「2階部分・3階部分」を作るものが、昨今よく話題になる私的年金です。

 

また、日本の年金は自らが納めた年金保険料を積み立てて将来受取るというわけではありません。

世代間扶養・賦課方式と言って、現役世代が収めた保険料を財源として、リタイヤした世代に年金を支給します。(こうした点がよく、ポピュリストたちが世代間憎悪を煽るのに利用されます)

 

それでは年金を受取る65歳以上のリタイヤ世代と現役世代のバランスを見てみると・・・

(内閣府「令和5年版高齢社会白書」より)

2022年 現役世代2人→65歳以上1人
2070年 現役世代1.3人→65歳以上1人

となります。

 

これでは誰でも不安になります。私も不安です。

 

その不安を煽られて見知らぬ他人を憎まずにいるためにも、まずは自らの生活基盤をしっかりと作っていくことが必要です。そのためにファイナンシャルプランニングの知識や技術が求められているのだと自分は考えています。

 

私的年金

 

将来に備えて自ら年金の2階部分・3階部分を作るための私的年金には、いくつか種類があります。

 

  • 企業型確定給付年金・・・ 企業年金制度のひとつで、事業主が従業員の受取る年金額を約束し(確定給付)、運用の責任も企業が負うというもの。
  • 企業型確定拠出年金・・・ 企業が掛け金を負担し(マッチング拠出と言って従業員が上乗せする仕組みもあります)、運用の指図とそのリスクは従業員が負うといもの。運用した金融商品の価格変動によって、元本割れなどのリスクあり。

上記の2つは企業年金で、こうした制度を採用している企業で働いていなければ加入することはできません。

 

対してiDeCo個人型確定拠出年金は2017年に加入資格の対象が拡大され、個人で老後に備えるための私的年金として注目を浴びるようになりました。

iDeCoは被保険者の区分によって毎月の掛金に上限があり、また先に述べた企業年金の有無やその種類と加入状況によって拠出できる掛け金の限度額が変わります。

また同じく資産形成の手段としてよく比較されるNISAと、そのメリット・デメリットについても気になるところです。

 

次回のブログ記事では、iDeCoについて解説したいと思います。

iDeCo 個人型確定拠出年金 - 板前FP雑記帳

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。