板前FP雑記帳

働く人、生活者のためのファイナンシャル・ファイナンシャル

パート・アルバイトの社会保険の二重加入

社会保険の適用条件の拡大

2020年5月、高齢化に伴う社会保障費の増大及び労働人口の減少へ対応するために「年金制度改正法」が成立し、2022年4月からすでに施行が始まっています。

在職老齢年金の支給停止額の引き上げや年金支給開始年齢の選択肢の拡大など、私たちの今の生活や将来に関係あるものばかりですが、その中でもパート・アルバイトで働く方たちにとって関心が大きいのは社会保険の適用拡大だと思います。

 

○○○万円の壁というキーワードはよく耳にすることが多いとは思いますが、それではまず社会保険の適用事務者で働くパート・アルバイトの社会保険の加入条件を確認してみましょう。

 

パート・アルバイトの方の社会保険の加入条件

 

月の労働日数および1週間の労働時間が、フルタイムの正社員の4分の3以上であること。

 

上記の条件を満たさない場合でも、以下の条件を満たすと社会保険に加入することになります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上である。
  • 賃金月額が88,000円以上である。
  • 2ヶ月を超えて雇用される見込みである。
  • 学生ではない。

 

所定労働時間とは、通常は契約上の労働時間が20時間以上であるかどうかで判断されます。ただし、実際の労働時間が20時間以上である状態が2ヶ月以上続いた場合、さらにその状態がそれ以降も続くと判断された場合には、3ヶ月目から社会保険が適用されます。

 

賃金月額とは基本手当と諸手当のこと。この諸手当とは「特別な条件はなくとも毎月定期的に支給される手当」のことを指します。つまり、臨時で支給される手当や「最低賃金法」という法律で諸手当に含まないと決められている手当は、この諸手当には含まれません。

諸手当に含まれないもの

  • 賞与、慶弔見舞金など臨時で支給されるもの
  • 通勤手当(交通費)、皆勤手当、深夜割増手当など

 

また上記の条件で働くパート・アルバイトが所属する事業所(職場)についても、その範囲が拡大されています。

2022年10月〜 従業員100人超(101人以上)

2024年10月〜 従業員50人超(51人以上)

 

↓社会保険料の年収の壁についてはこちら

106万円?130万円? 社会保険料の年収の壁とは? - 板前FP雑記帳

 

 

 

複数のアルバイト先で社会保険の加入条件を満たしている方の場合

 

例えば、配偶者やご家族の扶養に入りながらパート・アルバイトをされている方は、社会保険加入のメリットと手取りの減少を秤にかけて、どちらを選ぶか検討されることと思います。

 

ですが、世の中には様々な事情でアルバイトを掛け持ちしながら生計を立てている方も多くいます。そんな方が2つのアルバイト先で社会保険の加入条件を満たした場合には、どのようになるのでしょうか?

 

自分の職場ではアルバイトを掛け持ちしている外国人のスタッフが多く、2022年の適用範囲拡大の際に同じような質問をたくさん受けました。

その頃の自分はFPとしての知識もなく、業務の合間に職場の事務所に電話で確認したところ・・・

 

「その場合、ウチともう一つのアルバイト先の両方で社会保険に加入することになります」

「・・・マジで?」

 

というやり取りになりました。

なんで?それじゃあ余計に多くの社会保険料を払うことになるじゃん、と(自分も含めて)多くの方が思うかと思います。

社会保険に加入するかどうかは、あくまでも「その職場と、その職場で働く人が、社会保険の加入条件を満たしているか」で判断されてしまうのです。

 

パート・アルバイトを掛け持ちして社会保険に二重加入する場合

 

複数の職場で社会保険に加入する場合には、年金事務所または日本年金機構の事務センターに「健康保険・厚生年金保険・被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。

 

日本年金機構事務センター↓

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/20150216.html

年金事務所↓

https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/kankatsu/index.html

 

保険証

保険証は1つです。上記の届け出により、主たる事業所を被保険者(はたらいて社会保険に加入する人)が自ら選択します。

 

保険料

  1. それぞれの職場から受ける報酬月額を合算して、標準報酬月額を決定します。
  2. 決定した標準報酬月額をもとに保険料を算出します。
  3. 算出した保険料は、それぞれの職場で受ける報酬月額をもとに按分(比例した割合で振り分ける)して徴収されます。

 

この標準報酬月額とは、働く人の給与などの報酬を一定の幅で区分した等級に分類したものです。これをもとに社会保険料が算出されます。健康保険・介護保険は1〜50等級、厚生年金は1〜32等級に分類されます。

 

メリットとデメリット

 

複数の職場で社会保険に加入せる場合、その分多くの保険料を納めることになるので将来受取る年金額を増やすことができます。

ですがその分、当然のことながら手取り額は減少します。

 

パート・アルバイトを掛け持ちして生計を立てている方にとっては、将来の年金ももちろん大事だけど、生活していくための手取りの方が重要だよという方も当然いらっしゃると思います。ダブルワーク・掛け持ちによる収入増と差し引かれる保険料をきちんと見極める必要があります。

現実的には社会保険を二重加入しなくて済むように、出勤日数や勤務時間などシフトを調整したり、短時間で働けるアルバイトを増やしたりなどの対策をされる方が多いのかなと思います。

 

冒頭に書いたように、2024年10月から社会保険の適用事業所の範囲が拡大されます。自分のアルバイト先や働き方が社会保険の加入条件を満たすのかどうか、きちんと確認しておく必要があります。