板前FP雑記帳

働く人、生活者のためのファイナンシャル・ファイナンシャル

働きながら、年金も―在職老齢年金

歳をとっても働きたい

2022年の「就業構造基本調査」によれば就業者における65歳以上の高齢者の割合は13.5%、働いている人たちのうち実に7人に1人が高齢者ということになります。

さらに高齢者の就業率は25.2%、さらに65歳から69歳の年代では52%にのぼります。

 

歳をとっても働きたいと考える人が増えていることは事実で、その理由は「収入が欲しいから」が全体の45.4%で最も多く、「働くことは体に良い・老化の防止」「仕事が楽しい・これまでの経験や知識を生かしたい」などの理由がつづきます。

 

年金だけでは老後の生活が不安、経済的な安心が欲しい。

そう考える人達が、働きながら年金を受け取ることができる。その制度が在職老齢年金です。

 

ですが在職老齢年金というと「働きながら年金ももらえる」というよりも、「働いていて収入があると年金が減額されてしまう」という負のイメージを持つ方が多いように思います。

そこで今回のブログ記事ではその減額調整についても解説していきたいと思います。

 

在職老齢年金

在職老齢年金とは、会社員として(厚生年金の被保険者として)働きながら、厚生年金を受け取ることができる制度です。自営業者など厚生年金に加入されていない方は対象外となります。

 

65歳から(繰り上げ受給や特別支給の老齢厚生年金を受ける場合は60歳から)70歳に達するまでの間に、厚生年金に加入しながら年金を受け取ることになるので保険料の負担義務があります。

70歳以上では厚生年金の加入資格を失うことになるので保険料の納付義務はありません。

 

在職老齢年金の支給停止

 

在職老齢年金では年金と賞与を含む給与の合計額によって、年金の一部または全額が支給停止(減額)

となることがあります。

基本月額総報酬月額相当額の合計額が50万円を超える場合、支給停止の対象となります。

  • 基本月額=老齢厚生年金の月額。例えば老齢厚生年金の年金額が120万円(年額)の場合、120÷12=10となり基本月額は10万円です。
  • 総報酬月額相当額=毎月の賃金+1年間で受け取った賞与÷12となります。

 

なお、この50万円という減額調整額は令和6年度のもので、毎年度変化するので注意が必要です。

 

少しでも生活を豊かにしようと働いているのに、年金が減額されては元も子もないですよね。どのような計算で年金が減額調整されるのか具体的に見ていきます。

 

①基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円以下の場合

→支給停止額=0円(全額支給)

 

②基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円を超える場合

→支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額−50万円)÷2

となります。

 

例えば、年金の基本月額が20万円、総報酬月額相当額が35万円の場合

(20万円+35万円-50万円)÷2

となり、毎月2万5千円(年間30万円)が減額されてしまうことになります。

 

自分たちのような普通の給与所得者にとって、月2万5千円はけっこう大きいです。お得なプランがあれば旅行にもいけますし、何回飲みに行けるんだろうとか考えてしまいます(笑)。

 

なお、減額調整はあくまでも老齢厚生年金を対象にしているので老齢基礎年金は全額支給となります。

 

在職定時改定制度

在職老齢年金制度によって厚生年金に加入しながら年金を受け取っていた場合、退職して1ヶ月を経過した時には退職の翌月分から、70歳に達して厚生年金の加入資格を失った時には70歳に達した翌月分から、それまで納めた厚生年金保険料が年金額に反映されることになります。その仕組みを退職改定といいます。

 

加えて2022年度に新たに導入された在職時定時改定制度では、65歳から70歳未満の方が9月1日の時点で厚生年金に加入して働いていた場合には、翌月の10月分から年金額が見直されるようになりました。

年金を受け取りながら働いて納めた保険料が、1年毎に受け取る年金額に反映されるようになったというわけです。

 

これは嬉しいですよね。働く意欲が湧く人も多いのではないでしょうか。

ただし受け取る年金額が増えれば年金の基本月額に反映されるので、既に述べた通り総報酬月額相当額と合わせて一定額を超えると厚生年金の減額調整の対象となってしまうので注意が必要です。

 

厚生年金の適用事業所で65歳を過ぎて働く場合、働きながら年金を受け取るのか、あるいは繰下げ受給をするのかなど選択は様々だとは思いますが、いずれにせよ生活設計をしっかりと作っていく必要があると思います。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。