板前FP雑記帳

板前として「働くFP」からの、普通の暮らしを守るためのいくつかのヒント。

「ギルド」に「無尽」、そして「ハレー彗星」と生命保険の始まり

生命保険の歴史と起源を解説!ギルドやハレー彗星、福沢諭吉との意外な関係

リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理して被害や損失の回避・低減を図るプロセスのことです。変化が激しく予測の難しい現代社会においては、企業だけでなく個人においてもリスクマネジメントの必要性が高まっています。

そして、私たちの生活の中で最も身近なリスクマネジメントの手法が「生命保険」という制度です。

1. リスクマネジメントとしての生命保険

リスクマネジメントの手法は、大きく分けて「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つに分類されます。

  • リスクコントロール:損失の発生頻度や大きさを削減するための対策
  • リスクファイナンシング:損失を補てんするための金銭的な手当て

さらに、リスクファイナンシングは「自ら負担するか(保有)」か「第三者に負担させるか(移転)」に分かれます。

分類 概要 具体的な身近な例
保有 リスクによる損失を自ら負担する 将来に備えての積立貯蓄
移転 リスクによる損失を第三者に負担させる 生命保険・損害保険

つまり生命保険は、万が一のリスクを「移転」し、金銭的な備えをするための代表的な手段と言えます。

2. 生命保険の起源:中世ヨーロッパの「ギルド」

生命保険のルーツは、中世ヨーロッパにまで遡ります。

相互扶助組織「ギルド」の誕生

中世ヨーロッパでは、商工業に携わる人々が「ギルド」という同業者組合を作り、組合員同士で冠婚葬祭の費用などを分担し合っていました。これが生命保険の起源であるとする説が有力です。

17世紀英国の「香典前払い組合」の失敗

その後、17世紀末のイギリスで牧師たちが「香典前払い組合」を結成しました。しかし、この制度はわずか10年ほどで立ち行かなくなります。

その理由は、「年齢や期間に関係なく受け取る金額が同額」という不公平な仕組みにありました。その結果、若い世代が離脱し、制度が崩壊してしまったのです。

3. 近代生命保険の確立:ハレー彗星と大数の法則

現代のような合理的で公平な生命保険制度を確立させたのは、科学的な統計学の発展でした。

エドモンド・ハレーによる「生命表」

「ハレー彗星」の発見者として知られる英国の天文学者エドモンド・ハレーは、統計学上の「大数の法則」を人の寿命に応用しました。

大数の法則とは?
一つ一つは偶発的に見える出来事も、多くの事例を集めて統計をとると一定の法則が見られるという定理。

ハレーはこの法則に基づき、特定の年齢層における死亡率や平均余命を示した「生命表」を作成しました。これが近代生命保険の礎となります。

平準保険料方式の誕生

その後、数学者ジェームス・ドドソンにより、生命表を根拠に「加入時の年齢で保険料が決まり、払込期間中の保険料が一定になる仕組み(平準保険料方式)」が考案されました。これにより、ようやく公平な近代制度が完成したのです。

4. 日本における生命保険の歴史

日本でも独自の相互扶助の歴史が存在しました。

鎌倉時代から続く「頼母子(たのもし)」「無尽(むじん)」

鎌倉時代から江戸時代にかけて、庶民の間で「頼母子」や「無尽」と呼ばれる民間互助組織が流行しました。これは構成員が掛け金を出し合い、くじや入札で選ばれた人に給付を行う、日本古来の助け合いの仕組みです。

福沢諭吉と「災害請合」

日本に西洋の保険制度を初めて本格的に紹介したのは、福沢諭吉です。1867年の著書『西洋旅案内』において、福沢は「保険」という言葉の代わりに「災害請合」という訳語を用いて、その仕組みを解説しました。

まとめ:保険の本質は「助け合い」の歴史

人が社会を形成し、生きていく中で生まれた「相互扶助」の精神が、長い歴史を経て現在の生命保険制度へと発展しました。

時代や社会が変わっても、「みんなでお互いのリスクを負担し合う」という保険の本質は変わりません。歴史を知ることで、保険の必要性をより深く理解できるのではないでしょうか。

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