ケガや病気への不安
健康保険の加入者は通常、医療費の1割〜3割を自身の年齢や収入に応じて負担しています。
ですが治療にかかる期間が長くなってしまったり、入院による治療が必要になってしまった場合には、医療費がかさみ高額になってしまうことがあります。
日本では、高額になった医療費の家計負担が重くならないよう医療機関や薬局で支払った医療費が自己負担の限度額を超えた場合、その超えた分の金額が支給される高額療養費制度があります。
日本保険文化センターの2022(令和4)年度版「生活保障に関する調査」によると、ケガや病気に対する不安を感じている人は88.5%にのぼります。
さらにケガや病気に対する不安については
- 長期の入院により医療費がかさむ・・・50.1%
- 公的医療だけでは不十分・・・41.4%
- 家族への肉体的・精神的負担・・・51.8%
となっています。
長期の治療や入院による高額な医療費と家族へ負担をかけることへの不安が、いまの社会を生きる人たちにとって重くのしかかっていると言えます。
そうした不安に対処していくためには、まずは公的な医療制度と社会保障を理解したうえで、自分の現在の生活や将来のために必要な保障内容を把握して準備することに尽きると思います。
少しでもこのブログがお役に立てればと思います。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヶ月にかかった医療費が高額になり自己負担の限度額を超えた場合、超えた分の金額が払い戻しされる制度です。
入院や治療が月をまたいだ場合には月ごとに自己負担額を計算します。
例えば入院した期間が1月20日〜2月7日だった場合は、1月20〜31日までの分と2月1日〜7日までの分の自己負担額をそれぞれ計算することになります。
また、高額療養費制度の対象となる自己負担額は健康保険の被保険者とその扶養家族との分を合算(世帯合算)することができます。
ただし、合算の対象となるのは医療機関ごとにそれぞれ算出された医療費が2万1000円以上のものとなります。またこの場合、同じ病院で会ったとしても医療入院と医科外来、さらに歯科と歯科外来とはそれぞれ分けて自己負担額を計算します。
高額療養費制度の自己負担限度額
自己負担額から、収入や年齢によって設定された自己負担限度額を差し引いた額が高額療養費として支給されます。
それでは年収ごとの自己負担限度額を見ていきたいと思います。
- 住民税不課税···35,400円
- 〜約370万円···57,600円
- 約370〜770万円···80,100円+(医療費−267,000円)×1%
- 約770〜1,160万円···167,400円+(医療費−558,000円)×1%
- 約1,160万円〜···252,600円+(医療費−842,000円)×1%
となります。
続いて70歳以上の年収ごとの自己負担限度額は
- Ⅰ住民税非課税世帯(年金収入80万円以下)···8,000円(個人)、15,000円(世帯ごと)
- Ⅱ住民税非課税世帯···8,000円(個人)、24,600円(世帯ごと)
- 約156万〜370万円···18,000円(年間上限144,000円)
年収約370万円〜は現役世代並みの収入があるとみなされ、自己負担限度額は69歳以下と同じになります。
(例)高額療養費の計算
①自己負担限度
「健康保険の加入者で35歳・年収約500万円、医療費100万円」だった場合には
80,100+(100,000-267,000)× 1%=87,430
となって、その月の自己負担限度額は87,430円です。
②高額療養費
健康保険加入者が窓口で払う医療費は3割負担ですので30万、そこから自己負担限度額を差し引いて
300,000−87,430=212,570
となり、約21万超の金額が高額療養費として払い戻しされます。
健康保険の給付対象外である先進医療などにかかる費用は、高額療養費の対象にならない点に注意が必要です。
入院にかかる様々な費用
入院には治療費・入院基本料といった公的な医療保険が適用される費用と、食事代・差額ベット代など公的な医療保険が適用されない費用がかかります。
加えて入院中に必要な着替えやその他の日用品や消耗品、またお見舞いや付き添いなどの交通費も必要になります。
〇入院時食事代(1食あたり)
- 一般···460円
- 住民税非課税者···210円(90日以内)、160円(90日超)
- 住民税非課税で所得が一定基準に満たない70歳以上の高齢者···100円
〇差額ベット代(1日あたり)
差額ベット代は病院が自由に設定することができるため、病院や病室の種類によって異なります。ここでは平均的な金額を見ていきます。
- 1人部屋···8,018円
- 2人部屋···3,044円
- 3人部屋···2,812円
- 4人部屋···2,562円
(令和元年7月1日現在:厚生労働省保険局医療課調べによる)
入院にかかる自己負担費用の平均
それではここで日本保険文化センターの2022(令和4)年度版「生活保障に関する調査」より、入院時の自己負担費用(治療費に入院基本料、食事代・差額ベット代・家族などのお見舞いを含めた交通費・着替えや日用品他)を見ていきたいと思います。
〇入院時の自己負担費用の平均
- 5日未満···8万7,000円
- 5〜7日···15万2,000円
- 8〜14日···16万4,000円
- 15〜30日···28万4,000円
- 31〜60日···30万9,000円
- 61日以上···75万9,000円
となります。
高額療養費をふまえて必要な医療保険を考える
病気や治療方法、また病院や病室などの種類によって入院にかかる費用は異なりますし、どこまでのリスクに備えておくべきなのか・備えるための医療保険などの費用をいくらまで負担できるのか、その人の年齢や生活、そして考え方によっても変わってくることでしょう。
同じく日本保険文化センターの2022(令和4)年度版「生活保障に関する調査(医療保障に対する私的準備状況)」によると、
- 公的な医療保険制度以外で経済的な準備をしていると答えた人の割合は82.7%
- 私的な準備手段として生命保険が68.8%、続いて預貯金が44.5%
- 疾病入院給付金の支払われる生命保険に加入している人の、平均的な疾病入院給付金日額は全体で8,700円(男性9,600円・女性8,100円)
まずは自分の現在の生活から、高額療養費など公的な医療制度をふまえた上で、必要な入院給付金などを割り出していくことが、現実的でムダのない医療保険選びにつながるのではと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。