板前FP雑記帳

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生命保険、死亡給付金と税金について

生命保険の保険金や死亡給付金を受け取る際に税金が課される場合があります。

さらに言うと生命保険の契約内容と形態の違い、具体的には「受け取る保険金の種類」「契約者(保険料を負担する人)・被保険者(保険の対象となる人)・受取人の関係」の違いによって、相続税所得税・住民税贈与税と課される税金の種類が異なります。
税金の種類が変われば適用される税率も変わります。

前回のブログで相続対策として生命保険を活用するメリットについて解説しました。
そのメリットを構成する主な要素のひとつに、「相続税の非課税枠を活用する」というものがあります。

相続対策として生命保険を契約するのであれば、その保険金に課される税金は当然のことながら相続税でなければなりません。
生命保険の契約や見直しを考えているという方もきちんと確認して、対策としてまるで見当はずれなことをしてしまったということのないようにしたいものです。

そこで今回は生命保険の死亡給付金と税金の関係について解説していきたいと思います。

死亡給付金にかかる税金とその種類


生命保険の被保険者が死亡したときに、保険会社から受取人に支払われるお金が死亡給付金です。
死亡給付金の契約形態による税金の違いについて見ていきます。

契約者(保険料負担者) 被保険者(保険の対象者・亡くなった人) 保険料受取人 税金の種類
A A B 相続税
A B A 所得税
A B C 贈与税

生命保険の死亡給付金において・・・

  • 契約者と被保険者が同一人物の場合・・・死亡給付金に相続税がかかります
  • 契約者と受取人が同一人物の場合・・・死亡給付金に所得税がかかります
  • 契約者、被保険者、受取人がすべて異なる人物の場合・・・死亡給付金に贈与税がかかります


わかりやすくするために、夫・妻・子として具体例を示します。

保険契約者(保険料負担者) 被保険者(保険の対象者・亡くなった人) 受取人 税金の種類
妻または子 相続税
妻または子 所得税
贈与税

となります。
契約形態のよる税金の種類の違いについてイメージしやすくなったかと思います。

死亡給付金に所得税がかかるケース

契約者と受取人が同一人物・被保険者が異なる場合、一時所得として所得税の課税対象(課税所得)となります。
その際、受け取った給付金の金額から払い込んだ保険料の金額と一時所得の特別控除額の50万円を差し引き、さらに2分の1をかけた金額が課税対象金額となります。


課税対象額=(死亡給付金-払込正味保険料総額-50万円)×2分の1

※払込正味保険料総額=払込保険料総額-配当金の合計額


なお、一時所得には所得税とは別に住民税が課されます。
課税される所得に対する所得税の金額は、以下の速算表を用いて簡単に算出することができます。税率をかけ、控除額を差し引きます。

所得税の税率

課税所得金額 税率 控除額
195万円未満 5% -
195万円以上330万円未満 10% 9.75万円
330万円以上695万円未満 20% 42.75万円
695万円以上900万円未満 23% 63.6万円
900万円以上1800万円未満 33% 153.6万円
1800万円以上4000万円未満 40% 279.6万円
4000万円以上 45% 479.6万円


2037年(令和19年)12月31日までの期間、通常の所得税に2.1%を上乗せする形で復興所得税が徴収されます。


それでは死亡給付金に課される所得税額について、具体例を出して計算していきたいと思います。*1

例)「死亡給付金1000万円、払込正味保険料総額500万円」の場合

1.課税対象となる所得金額を算出する

先にあげた一時所得の課税金額の計算式に当てはめて、課税所得額を求めていきます。

(死亡給付金-払込正味保険料総額-50万円)×2分の1

(1000万円-500万円ー50万円)×2分の1=225万円

となり、この場合の課税所得は225万円です。


2.課税所得額を速算表に当てはめて所得税額を求める

225万円は「195万円以上330万円未満」に該当するので、税率10%をかけて控除額9.75万円を差し引きます。

225,000,000×10%-97,500=127,500

となって、このケースの所得税額は127,500円であることがわかります。


3.所得税に復興所得税を上乗せする

所得税127,500円に復興所得税の2.1%を上乗せして、徴収される税金の額を算出します。

127,500×2.1%=2677.5

127,500(所得税)+2677.5(復興所得税)=130117.5


よって今回の「死亡給付金1000万円、払込正味保険料総額500万円」のケースでは、およそ13万円の所得税がかかることがわかります。

死亡給付金に相続税がかかるケース

契約者と被保険者(亡くなった人)が同一人物の場合、受け取った死亡給付金は相続税の課税対象となります。上記の表の「夫が自分を被保険者として生命保険を契約し、妻または子が死亡給付金を受け取る」というケースです。

ですが死亡給付金には残された家族の生活を支えるという大切な役割があり、そうした面を考慮して法定相続人が受け取る死亡給付金に課される相続税には所定の計算式で算出された金額が非課税になるという税制上の特典があるのです。


死亡給付金の非課税額=法定相続人の数×500万円

民法で定められた相続人(財産を相続できる人)を法定相続人といいます。

例(1)「死亡給付金1000万円/夫婦/子供はいない/夫の両親は健在」の条件で受取人が妻の場合

この場合の法定相続人は妻と夫の両親の3人ですので非課税枠は

500万円×3=1500円

となり、妻が受け取る1000万円の死亡給付金は非課税となるます。ちなみに死亡給付金は相続税の課税対象となっても、あくまで受取人である妻の固有の財産ということで他の相続人との遺産分割の対象とはなりません。

例(2) 「死亡給付金3000万円/夫婦/子供1人」の条件で妻が受取人の場合

この場合の法定相続人は妻と子供の2人ですので非課税額は

500万円×2=1000万円

死亡給付金3000万円のうち1000万円が非課税、2000万円が相続税の課税対象となります。

相続税の基礎控除

死亡給付金の非課税枠とは別に相続税には基礎控除という非課税枠があり、その金額は以下の計算式で算出されます。

相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

つまり死亡給付金を含む遺産の合計額から債務や葬式費用を差し引いて残った金額が相続税の基礎控除額を超えなければ、相続税はかからないのです。

例(1)のケースだと
3000万円×(600万円×3人)=4800万円

例(2) のケースだと
3000万円×(600万円×2人)=4200万円

がそれぞれ相続税の基礎控除額となります。
法定相続人が一人の場合でも3600万円の基礎控除があることになるので、まとまった額の、それなりに高額な遺産がある人以外は相続税が課されることは少ないのではないかと思います。

それでは最後に、この基礎控除額を超えた財産に課される相続税の税率を見ていきます。

【相続税の税率】

課税標準 税率 控除額
1000万円以下 10% -
1000万円超 3000万円以下 15% 50万円
3000万円超 5000万円以下 20% 200万円
5000万円超 1億円以下 30% 700万円
1億円超 2億円以下 40% 1700万円
2億円超 3億円以下 45% 2700万円
3億円超 6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

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生命保険を契約形態による死亡給付金の税金の違いを確認

ここまで解説してきたように、生命保険では契約者・被保険者・受取人が誰になるかで課される税金の種類が変わり、それに応じて税率も変わります。
この記事では詳しく触れませんでしたが、死亡給付金に贈与税が課された場合には、所得税や相続税に比べて税金は高くなってしまいます。

もしもの時、誰に、どのくらいのお金を残したいのか。
「もしも」の備えとして生命保険の加入を検討しているならば、契約による税金の違いをきちんと確認しておく必要があります。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

*1:一時所得は本来であれば総合課税といって他の所得と合算して所得税額を算出しますが、この例ではわかりやすさを優先して他の所得を考慮せずに税額を計算しています。