板前FP雑記帳

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金投資について考える

歴史的高値

金は2019年以降、国際的に価格が上昇し、国内では2025年6月16日に1gあたり17,678円という小売価格における過去最高額をつけるに至りました。現在でもその価格は歴史的高値で推移しています。

夕方のニュース番組などで、家に眠っていた貴金属を質屋に持っていくと思っていた以上の値段がついた、なんていう光景は見たことがある人も多いと思います。

金の価格は振り返ってみると、10年前では1グラム当たり約4900円、さらに20年前では約1700円ですから、この20年間でおよそ10倍に上昇していることになります。
こうしたニュースがメディアを賑わせていると、金の購入や金への投資に興味を持ち始める人も当然多くなります。よい波に乗りたい・乗り遅れたくないと思うのは、自然な人情です。

そして始めようと思えば、意外と簡単に始められるのが金投資でもあります。

金投資は、他の貴金属やエネルギー、農作物などへの投資と共に商品(コモディティ)投資に分類されます。
商品投資は一般的に、株式や債券などへの投資に比べて価格変動の大きさや情報を得ることの難しさなどから、初心者が投資の対象とするにはハードルが高いものです。

ですが金はかつては通貨として広く用いられたように、また現在でも各国の中央銀行が保有するなど、世界的に共通の価値がある資産といえます。
さらに金投資は、純金積み立てなど少額で始められるものも多く、商品投資の対象としては身近で手が出しやすいという特徴もあります。

ですが金投資を始める前に、あなたが金に投資しようと思う動機は何でしょうか?
その目的は?
そして金投資は、そうしたあなたの動機や目的にかなうものでしょうか?
なんとなくや勢いで始める前に、まずは知るところからはじめてみませんか?

今回のブログでは金投資の特徴やその種類について解説していきたいと思います。

投資対象としての金 その特徴

金投資の特徴、メリット・デメリットを箇条書きに書き出すと、こんな感じでしょうか・・・

  1. 価値がゼロになることがない
  2. インカムゲインがない
  3. 現物管理のリスクとコスト
  4. インフレリスクに強い
  5. 流動性の高さ

ひとつずつ解説していきます。

価値がゼロになることがない

金の特徴としてまず挙げられることは、その価値がゼロになることがない、ということです。

株式や債券といった金融商品は、発行体である企業や国家の業績や信用度によってその価値が決まります。
発行体の破綻によって、その価値がゼロになってしまう可能性があります。

一方で、金はそれ自体に価値がある実物資産であり、これまでその価値がゼロになったことはありません。

インカムゲインがない

株式であれば配当、債券であれば利子、といったように多くの人が投資の対象としている金融商品には それを保有することによって得られる利益(インカムゲイン)があります。

それに対して、金から得られるインカムゲインはありません。「金を保有している」というだけで生計をたてたり、家計の足しにしたりすることはできない、ということです。

金から得ることのできる利益は差益(キャピタルゲイン)、自分が買った時よりも高い価格で売ることができた時の利益です。

現物管理のリスクとコスト

金地金(ゴールドバー)や地金金貨を自宅で保管する場合、盗難や紛失、あるいは自然災害などによって失われるリスクがあります。
銀行などの貸金庫に預けておくほうが安全ですが、年間数万円程度の利用料がかかります。

金を現物で保有する場合、こうしたリスクやコストが伴うことを考慮しておく必要があります。

インフレリスクに強い

インフレになると現預金は実質的な価値が目減りします。一方で実物資産であり、その希少性が世界的に認められている金の価値は下がりにくく、インフレヘッジ(インフレ対策)として有効であると言えます。

流動性の高さ

流動性=交換のしやすさ。資産をどれだけ早く、どれだけ容易に現金に換えられるかという意味です。
不動産など他の実物資産に比べて、金は換金が容易で流動性が高いと言えます。

金 価格の変動要因

金に限らず、モノの価格というものは基本的には需要と供給のバランスで決まると言われています。「買いたい」と思う人が多いほどその価格は高くなりますし、反対に「売りたい」と思う人が多いほど安くなります。

その需要と供給のバランスを押し上げたり、あるいは押し下げたりする要因は様々であり、金の価格の上げ下げにもそうしたいくつかの要因が複合的に作用します。

金の価格は米ドルと「逆相関」?

国際市場において、金は通常1トロイオンスを単位として米ドル建てで取引されています。なので当然、金の価格はアメリカ経済、ひいては米ドル相場の影響を受けます。

「金価格は米ドル価格と逆相関」としばしば言われます。

アメリカ経済が好調な時は、アメリカの株式や債券などのリスク商品への投資が増加し、米ドルへの需要が高まります。その結果、相対的に金の需要が弱まり価格が下がることが多いのです。

反対にアメリカ経済が不調で景気が後退する懸念のある時は、安全資産といわれる金の需要が増しその価格が上昇する傾向にあります。

アメリカの政策金利

一般的に、金利が上がると金の価格は下がる傾向にあると言われます。金利が高いときには債券などインカムのある金融商品の需要が高まるのに比べて、利子などのインカムがない金に対する需要が弱まるからです。

地政学的リスク

「金の価格は、米ドル価格・米金利と逆相関の動きをする」、こうしたセオリーに当てはまらないケースもあります。それは紛争などの地政学的なリスクが生じたときです。

実物資産である金は「有事の金」と言われるように、国際情勢が不安定になったときにリスクオフとして買われて価格が上昇する傾向にあります。

実際、いまだに終わりの見えないロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマス、加えてイスラエルとイランによる軍事衝突など、地政学的リスクを背景として2023年以降の金価格は上昇傾向にあります。

日本国内の金取引は為替相場の影響を受ける

日本国内での金取引は円建てで行われます。

1トロイオンス単位・米ドル建てで取引される金を、1gあたりの円価格に換算して取引されるのです。そのため日本国内における金価格は、米ドル/円の為替相場の影響を受けます。

一般的に円安になるほど、金の価格は上昇する傾向にあります。

金投資の種類

それではいよいよ、金投資にはどのような手法があるのか、その種類と内容について解説していきます。
金投資には金の現物を購入する方法と、金に関連した金融商品を取引する方法があります。

金地金の売買

金地金は、99.99%の高純度の金塊(ゴールド・インゴット)のことを言います。国際的な規格で審査され、混ぜ物のない純金がその認定を受けることができます。

貴金属専門店などの店頭で延べ棒やプレート上の金地金を購入することが可能で、ブランドや純度などの品質を保証する刻印がされています。

取り扱う会社によって5g~500g・1㎏まで様々なサイズがありますが、500gに満たないサイズの売買の際には「バーチャージ」と呼ばれる手数料が、通常の販売手数料と別途かかります。

店頭での売値である「小売価格」と、そこから再販売のためのコストや買取業者の利益を差し引いた「買取価格」があります。「買取価格」は買い取り業者が独自に設定するもので、業者によって様々です。

地金金貨

地金金貨は各国の造幣局が発行し、その純度などの品質が保証されたもので、投資対象として人気があります。

デザイン性が高いことから、投資対象としてだけでなく、コレクションやギフトとしての需要もあります。
金地金と同様に、地金金貨も金相場によってその価格が変動します。加えてそのデザインや限定版などの希少価値が、地金金貨の価格に影響する場合もあります。

宝飾店や貴金属専門店などで1枚単位で購入できるので、金地金よりも少額での売買が可能です。

地金金貨にも、店頭での「小売価格」と買い取り業者が独自に設定する「買取価格」があり、サイズが小さいものほどその差額が大きくなる傾向があります。

金地金や地金金貨などの現物の売買の際、購入時には消費税がかかり、売却時の利益は譲渡所得として課税の対象となります。

純金積み立て

「金投資」と聞いてまず思いつく身近なものと言えば、純金積み立てではないかと思います。毎月一定の金額で買える分だけの金を購入していく手法で、取り扱う会社によって3000円、あるいは1000円から始めることができます。

価格が変動する金融商品を一度に購入するのではなく、一定額ずつ定期的に購入していく投資手法をドルコスト平均法といいます。
金融商品をまとまった資金で一括購入した場合には高値づかみのリスクがあるのに対して、ドルコスト平均法では

  • 価格の変動リスクを時間的に分散
  • 購入価格を平準化できる

というメリットがあります。

このように少額でコツコツと積み立てていく純金積み立ては長期的な資産運用に向いていますが、会社によって1.5%~3%程度の手数料がかかることがネックと言えるでしょう。

また預けた金の保管方法による違いにも注意が必要です。

  • 消費寄託・・・積み立てた金の所有権を積立会社に移転し、運用されます。保管料は多くの場合無料か、安価で済みます。購入者は返還請求権を持ちますが、積立会社の倒産などによって戻ってこないリスクも。
  • 混合寄託・・・積み立てた金は購入者の名義で保管され、積立会社名義の資産とは別に管理されます。積立会社が倒産した場合でも預けた金を取り戻せる可能性が高いですが、別途で保管料が発生します。
金ETF

「ETF(上場投資信託)」とは東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託のことで、金ETはその名の通り金価格に連動するETF商品です。

株式と同様に証券取引所を通して成行/指値注文で売買することができます。一般の投資信託が一日一回計算される基準価格で取引されるのに対して、ETFはリアルタイムで変動する市場価格で取引されます。

金ETFには、実際に金を保有し現物によって担保された金価格に連動する現物型と、金先物取引を利用して連動を目指す先物型があります。

金ETFは数千円程度の少額・低コストでの投資が可能で、現物を保有する必要がなく、盗難や紛失などのリスクがないことも大きな特徴です。

金に関連した投資信託

金価格への連動を目指して運用される投資信託に投資することも、金投資の手法のひとつです。

金関連の投資信託には投資対象を金ETFするもの、あるいはファンド・オブ・ファンズ方式*1で間接的に金現物に投資・運用ものがするものが多くあります。
円換算の金価格に連動するタイプや、米ドル建ての金価格に連動するタイプなど、投資対象によって違いがあるので注意する必要があります。投資対象が米ドル建ての場合その多くは、為替ヘッジ*2のあり/なしを選べるようになっています。

金関連の投資信託には、保有中に信託報酬*3というコストがかかります。
純金積み立てと同様に少額からの積み立て投資が可能で、ドルコスト平均法を用いて投資・運用することができます。新NISAの成長投資枠を利用すれば、運用によって得られた利益を非課税にすることができます。

まとめ

ここまで、投資対象としての金の特徴や、金投資の手法の種類について解説してきました。

金投資を始めようとする人がどの手法を選択すべきかは、このブログの冒頭の設問である「金に投資をしようと思う動機」によります。

買った時よりも高く売って利益を得たい、金地金や金貨などの実物を手元に持っていたいと考える方もいらっしゃると思います。
ですが、すでに書いたように金などの商品投資は投機的な需要が多く、投資の経験が浅い方が売買を繰り返して利益を得るのはなかなか難しいのが現実です。

そしてこれから投資を始めようとしている方には、「将来のためにコツコツと資産を育てたい」と考えている方が多いのではないかと思います。
そういった方には積み立てによる金投資が向いていると言えますが、金の特徴である「それ自体に価値がある実物資産であるが、持っているだけで新たな利益(配当や利子など)を生み出すもではない」という点に留意が必要です。

こう書いていくと、金を投資対象のメインとする動機は限られていくように思われます。
「それ自体に価値がある実物資産」という、株式や債券にはない特徴に目を向ければ、インフレなどのリスクヘッジや分散投資の対象として投資対象の10%程度が適しているとされているのも頷けるものです。
またどのような手法を選ぶにせよ、高値掴みのリスクがある一括購入よりも、ドルコスト平均法などを用いて時間を分散することでリスクを抑えることが基本と言えます。

あなたが金に投資したいと思う動機や目的は何でしょうか?
あなたが選ぼうとしている金投資は、そうしたあなたの動機や目的にかなうものでしょうか?

このブログが、知るヒントになれば幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

*1:株式や債券に直接投資するのではなく、複数の投資信託を投資対象とする投資信託

*2:投資における為替変動のリスクを抑える仕組みのこと

*3:投資信託の運用・管理にかかる費用。投資家が投資信託を保有している間、信託財産から差し引かれ徴収される