板前FP雑記帳

働く人、生活者のためのファイナンシャル・ファイナンシャル

普通の暮らしを守るための資産運用⑤ NISAとiDeCo その特徴と比較など


米国の著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏は、資本主義を「人の欲望が動かすカジノと、生活に寄り添う大聖堂の融合」と表現したそうです。

かつての日本では、投資と言えば「カジノ」のようにギャンブル的な要素が強くイメージされてきました。FXや先物取引のような、リスクと引き換えに短期間で大きな利益を追求する投機的な取引に焦点を当てれば、そうしたイメージにとらわれてしまうのも無理はありません。
ですが投資とは本来、「未来の成長や発展の可能性に対してお金を投じる」という考え方・行為のことを指します。

バブル崩壊から数十年、現在の日本ではNISAやiDeCoのように投資によって家計の資産を作っていくための制度がつくられ、それにともない資産運用・資産形成について学ぶ機運も育ちつつあります。
時間をかけて少しづつ、人生を豊かにする・守るための資産を育てていく。これこそが「生活に寄り添う」大聖堂としての役割ではないかと思います。

このブログではここまで「普通の暮らしを守るための資産運用」と題して

  1. 投資によって資産を形成していく必要性
  2. 投資信託の基本的な仕組み
  3. 投資信託がもつ様々なリスクや分類
  4. 投資を始めるためのスタートラインと基本的なリスクコントロール

という流れで解説してきました。
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積立投資を無理なく続けていくためには、家計の見直しなどによって投資のための資金を確保することも大切ですが、投資そのものに関するコストやかかる税金もできる限り抑えたいところです。
通常、株式や投資信託などに投資して得られた利益(売却して得られた利益や配当など)には約20%の税金がかかります。ですが現在、私たちの社会にはこうした利益に税金がかからなくなる制度が手厚く整備されていて、これを利用しない手はありません。

その非課税制度の代表的なものが、NISAiDeCoです。
このブログを書いている現在の時点で、iDeCoの加入者数は371万人・NISAの口座数は2696万口座と、すでに多くの人に利用されている制度です。

金融庁 NISA口座の利用状況に関する調査結果(令和7年6月末時点)の公表について

またこれから投資による資産形成を始めようという人も、NISAかiDeCoかどちらを始めればよいのか、あるいは両方始めたほうが良いのか、悩んでいるケースも多いのではないかと思います。

今回のブログではNISAとiDeCoについて、それぞれの特徴や違いについて解説していきたいと思います。

NISAとは

NISAとは「少額投資非課税制度」のことです。

冒頭でも述べたように、通常であれば株式や投資信託の配当金や分配金、さらにそれらを売却して得られた利益(売った金額ー買った金額と手数料などの必要経費=売却して得られた利益)には

  1. 所得税及び復興所得税・・・15.315%
  2. 住民税・・・5%

合わせて20.315%の税金がかかります。

家計における資産形成を支援するため、NISAを利用して金融商品へ投資した場合には、こうした投資によって得られた収益に税金がかからなくなくなります。

金融庁 NISAを知る:NISA特設ウェブサイト


NISAは2014年に始まり、社会情勢やニーズの変化に合わせてマイナーチェンジがなされてきましたが、抜本的な改正が行われた新NISAが2024年から始まっています。

新NISAの概要:つみたて投資枠と成長投資枠

新NISAにはつみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)の二つの投資枠があり、それぞれ年間投資額の上限や投資できる金融商品が違いがあります。なお、どちらも併用することが可能です。

金融庁 NISAを知る:NISA特設ウェブサイト
  • つみたて投資枠の対象が「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁の基準をみたしたもの)」であるのに対し、成長投資枠では「国内外の上場株式・投資信託など」に投資することができます。
  • つみたて投資枠はその名の通り毎月の積立投資が前提ですが、成長投資枠ではボーナス時や割安になった時の一括購入など、自分の好きなタイミングで投資することが可能です。
  • 非課税での保有限度額はつみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1800万円まで(そのうち成長投資枠は1200万円まで)となり、保有期間の制限も撤廃されて生涯を通じて無期限で保有できるようになりました。
  • 保有限度額1800万円のうち売却した分に関しては、その枠を翌年以降に再利用することができます。
NISAの始め方

銀行や郵便局、証券会社の窓口やインターネットで専用のNISA口座を開設すれば、NISAを始めることができます。対象年齢は18歳以上です。

注意が必要なのは、NISA講座は一人につき一口座までということ。

  • 複数の銀行や証券会社でNISA講座を作ることはできません。
  • 銀行と証券会社、郵便局にそれぞれ一つづつNISA講座を作ることもできません。
  • つみたて投資枠と成長投資枠を、それぞれ別の金融機関で利用することもできません。

ただし、利用する金融機関を年単位で変更することは可能です。

iDeCoとは

iDeCoは「個人型確定拠出年金」といって、自分で設定した掛け金を積立て運用し、将来の国民年金や厚生年金に上乗せして受け取ることができる、老後の資金作りを支援する年金制度のひとつです。
国民年金や厚生年金といった公的年金に対して、自分の意志と責任で運用し給付を上乗せする制度を私的年金といい、iDeCoはその私的年金の代表的なものだと言えます。

厚生労働省 iDeCoの概要
iDeCoの始め方と加入資格

iDeCoに加入するには、銀行などiDeCoを取り扱う金融機関での加入手続きが必要です。

以前は会社員や公務員がiDeCoに加入するためには「事業主証明書」という書類を発行してもらう必要がありましたが、2024年の制度改正によって個人の口座から掛け金を拠出する場合には「事業主証明書」は不要となりました。なんとなく職場での手続きは面倒・職場の人に知られたくないという人にとっては、iDeCoへの心理的なハードルが下がったのではないでしょうか*1

これまでの制度の改正によって、多くの人がiDeCoに加入できるようになりましたが、以下のケースではiDeCoに加入することができないので注意が必要です。

  • 65歳以上の人はiDeCoに加入できません。
  • 国民年金保険料を払っていない人、または国民年金保険料の免除や猶予を受けている人はiDeCoに加入できません。
  • 農業者年金に加入している人はiDeCoに加入できません。
  • 勤め先の企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人で、加入者掛け金を上乗せしてマッチング拠出している人はiDeCoに加入することができません。
iDeCoの掛け金

iDeCoの掛け金は、毎月5,000円から1,000円単位で自由に設定できます。
ただし、加入者の職業によって毎月の掛け金の上限が異なります。

iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)をはじめるための4つのポイント
iDeCoの節税メリット① 掛け金

イデコでは毎月の掛け金の金額が所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されます。

例えば毎月1万円をiDeCoで積み立て運用した場合・・・

  • 年収350万円の人で、年間約18,000円
  • 年収500万円の人で、年間約24,000円
  • 年収700万円の人で、年間約36,000円

の節税効果があります*2
www.ideco-koushiki.jp
こうしてみるとiDeCoの掛け金の節税効果は、年収が高い人ほど効果が大きいのがわかります。
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iDeCoの節税メリット② 運用益が非課税

この辺はNISAの節税効果と同様です。通常、金融商品の運用で出た利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでは非課税となります。

iDeCoの節税メリット③ 受け取る時

iDeCoによって積み立てた老後資金は、受け取り方を一時金か年金形式かで選択することができます。

  • 一時金で受け取る場合・・・退職控除
  • 年金で受け取る場合・・・公的年金等控除

とそれぞれ所得控除の対象となり、税負担が軽減されます。
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iDeCoで取り扱われる運用商品

iDeCoの対象となる運用商品のラインナップは、金融機関によって異なりますが大きく二つのタイプに分かれます。

  • 元本確保商品・・・定期保険や保険など、原則として元本が確保されている運用商品
  • 投資信託
iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)をはじめるための4つのポイント
iDeCoの手数料

iDeCoにかかる手数料には、加入時に支払うものと運用中に毎月差し引かれるもの、受け取る給付金から差し引かれるものがあります。

  • 加入時手数料(2,829円)
  • 毎月差し引かれる手数料(171円/月)・・・国民年金基金連合会に払う加入者手数料(月105円)と、資産の管理を担う事務委託手数料(月66円)が毎月差し引かれます。そのほか金融機関によって運営管理手数料が発生します(無料の金融機関もあります)。
  • 給付手数料(一回の振り込みにつき440円)

節税効果も大きいiDeCoですが、このようにそれなりの手数料が発生します。掛け金の額が小さいと、手数料が運用益を上回る「手数料負け」が発生するリスクがあるます。個人的には最低毎月1万円からの運用をお勧めします。

今後の改正の見通し

iDeCoの加入年齢・掛け金ともに上限の引き上げが2025年の税制改正大綱によってしめされ、2027年から実施される予定です。
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NISAとiDeCoの比較:資金の自由度と節税効果

  • 資金の自由度・・・ NISAでは「つみたて投資枠」「成長投資枠」ともに、いつでも好きなタイミングで資金を引き出すことができます。またその使い道も自由です。一方で老後のための資産作りを目的としているiDeCoでは原則として60歳以上にならないと給付を受けることはできません。
  • 投資額・・・NISAでは「つみたて投資枠」「成長投資枠」それぞれの上限の範囲内で、いくら投資するのか自由に決めることができます。iDeCoの場合、毎月いくら掛けられるのか掛け金の上限が職業によって異なります。
  • 節税効果・・・NISAの節税効果は「運用で得られた利益」に対してのみであるのに対し、iDeCoでは「毎月の掛け金」「運用で得られた利益」「受け取る給付」と節税の効果がより大きくなります。

こうして比べてみるとNISAは資金の自由度が高く、iDeCoにはより大きな節税効果があるということがそれぞれの特徴であると言えます。

例えば20代・あるいは30代のように、将来に結婚・出産・独立などのライフイベントが多く控えている場合は自由度の高いNISAから始めてみるのが良いかもしれません。
その一方で、老後のための資金作りを優先したい人・収入が高くなりより多くの節税効果を得たい人には、先にiDeCoへの加入をお勧めする場合もあります。
先にNISAから始めて、資金に余裕ができたらiDeCoに加入(あるいはその逆)というパターンもあると思います。

NISAとiDeCo、どのように活用するのかはその人の置かれた状況によって異なります。
「何のために資産をつくるのか」
「今後の人生で何を優先していくのか」
自分自身のライフプランとよく照らし合わせて、上手に活用していきたいところです。
このブログが少しでも参考になれば幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

*1:ただし、iDeCoの掛け金を給料から天引きにする場合には、引き続き「事業主証明書」が必要になります。

*2:節税額はあくまでシミュレーターを用いたおよその金額であり、正確性及び信頼性を保証するものではありません。