板前FP雑記帳

働く人、生活者のためのファイナンシャル・ファイナンシャル

カラスミ作りと国債利回り

ボラの卵が入荷すると、もうこの時期だなと思います。
カラスミを仕込む時期ですね。

血抜きをした状態のボラの卵。ここから塩漬けです。

カラスミづくりは、血抜き・塩漬け・塩抜き・酒漬け・成形・乾燥といった工程を、最低でも数週間かけて踏んでいきます。

先のことなどわかりません。
それでも自分なりに出来上がりを想定しながら、一つ一つの作業に臨むわけです。
塩漬け・塩抜きの具合、漬ける酒に何を選ぶか、破けないように油を塗りながらの乾燥。
一つの工程が他の工程に影響を与え、そういった諸々が最終的な仕上がりに影響します。

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何度か書いていますが、長期金利は「経済の体温計」と言われます。
それは長期金利の水準が、将来の経済の先行きに対する予測に基づいた資金の需要と供給のバランスによって形作られるからです。
そしてその長期金利の代表的な指標となるのが、「10年物国債の利回り」です。

そして長期金利は、長期的な信用が問われる指標でもあるのです。
一つ一つの仕込みがカラスミの仕上がりを左右するように、「財政の健全性」や「経済政策の実効性」に対する市場からの評価によって長期金利は変動します。

長期金利の変動は、国の借金や住宅ローンの金利にも直結します。

しかし、そもそも「国債利回り」とは何なのか?
どのような要因によって「国債利回り」は変動し、そしてなぜ長期金利の代表的な指標となっているのか?
今回はそうした基本的なメカニズムについて書いていきたいと思います。

1:「国債利回り」とは何か

そもそも国債(債券)とは

債券とはいわば、お金を借りた際に発行する借用証書のことをいいます。
その発行体が企業であるなら「社債」、国であるなら「国債」です。
国内の債券市場において国債が占めるウェイトは大きく、債券発行残高の実に80%以上に上ります。

「債券」と言っても現在は電子化され、いわゆる紙の券は発行されていません。
ですが借用証書なので、借りた金額や返済の期日などはきちんと明示され、購入した金融機関のウェブサイトなどで確認することができます。

  • 国債:国が発行する借用証書
  • 額面:一般に言う「元本」のことで、期日が来たら返済される金額のこと
  • 償還日:元本を返済する期日
  • クーポン:満期まで定期的に支払われる利息、あるいはその利率(表面利率
国債(債券)の利回りとは

株であれ、債券であれ、あるいは不動産においても、投資した金額に対する利益率のことを「利回り」と言います。

債券を保有していた場合に得られる利益には前述のクーポンだけではなく、買った時と売った時の差額から得られる利益があります。
利回りとはこうした総合的な利益率を示す指標なのです。

債券の利回りを求める計算式は以下の通りです。

この式が示す通り、国債(債券)利回りとは、年間にもらえる利息収入と満期時までの売買損益を合わせた総合的な利益を、購入金額に対して計算したものだということがお分かりいただけるかと思います。

※債権を償還日を待たずに売却した場合の利回りは、「残存期間」を「保有期間」に置き換えて計算します。

国債(債券)の価格と利回り

そして国債(債券)の利回りを理解するうえで重要なことは、価格と利回りは逆相関になるということです。

飲食店でも小売店でも、商売では仕入れ原価が安くなれば利益率は上がりますし、逆に仕入れが高くなれば利益率は圧迫されて下がってしまいますよね?
国債に投資する際にも、安い価格で買うことができれば利回りは上がり、価格が高くなれば利回りは下がっていくというわけです。

例えば、「額面100万円・表面利率3%」の国債が、1年後に償還されるとします。
この国債の価格が2万円値下がりした場合と、逆に2万円値上がりした場合の利回りを比較してみましょう。

国債が売られて価格が2万円下落した場合の利回りが5.10%であるのに対し、価格が上昇した場合の利回りは0.98%となっています。

このように、国債が売られ価格が下落すると利回りは必ず上昇するのです。

国債価格と利回りは逆の動きをする。「板前FP雑記帳」作成
なぜ「10年物国債の利回り」が長期金利の指標となるのか

国債は、投資対象として最も安全な資産であると考えられています。
国債のように元本が失われる心配がほとんどない金融商品から得られる利回りを「無リスク金利(リスクフリーレート)」と言います。

市場参加者が自分が引き受けるリスクと、それに対して求めるリターンを評価する時に、この「無リスク金利」がその基準となっています。
「リスクのない資産への投資でこのくらいのリターンがもらえる。それでは自分が投資しようとしている金融商品のリターンは、そのリスクに見合っているのか」というように投資判断の物差しとなるのです。

そして国債の中でも「10年物国債」というのは最も取引量が多く、市場で取引をする際に意識される安全資産の利回り(無リスク金利)の水準を最も色濃く反映していると言えます。

つまり、「10年間、国にお金を貸す(国債に投資する)なら、だいたいこれくらいの金利(利回り)が必要だ」と多くの人が考える水準によってお金のやり取りがなされ、それが基準となって長期金利が形成されていくのです。

2:債券「利回り」と「リスク」の関係

金融市場における「リスク」とは?

続いて国債をはじめとする利回りが変動する大きな要因である、リスクに対する評価との関係についてみていきたいと思います。
私たちが日常生活で「リスク」という言葉を使う時、それは危険なことであったり、損をすることを指す場合が多いものです。
ですが本来、「リスク」という言葉には「予想通りにいかない=不確実性」という意味があります。

そしてリスクには、それが起こる要因によって様々な種類があります。
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株式であれ債券であれ、金融商品を投資対象として見た場合のリスクは、買った時よりも価格が下がってしまうこと(価格変動リスク)だと思います。

それでは債券投資において価格が下がってしまう最も大きな要因は何かと言えば、それは債券の発行体が期日通りに元本やクーポンを払えなくなってしまう可能性のことです。

これを「信用リスク」と言います。

この「信用リスク」が起きてしまう状態、つまり借りたお金をきちんと約束通りに返すことができなくなってしまうことを債務不履行と言います。
企業であれば経営難による資金繰りの悪化、国家であれば財政破綻によって債務不履行が起こるわけですから、その可能性があるというだけで債券の価格は大きく下落(利回りは上昇)してしまうのです。

利回りは信用の「通信簿」

そしてファイナンス、とりわけ投資の世界においてはリスクとリターンの間に明確な原則が存在します。
それは、リスクが高いものには高いリターンが求められる、ということです。

投資家は、リスクの高い金融商品に投資する場合、当然のことながらそれに見合うだけのより高いリターンを求めて投資します。この「より高い」部分、いわばリスクを引き受けることによって上乗せされる分の利益をリスクプレミアムと呼びます。

ですから財政が悪化している国が発行するリスクの高い国債に投資する場合には、リスクプレミアムとしてより高い利回り(=安い価格)が求められます。

これを逆から見れば、国債の利回りが高くなるということはそれだけ財政悪化などによるリスクが高いと評価されている、と言うこともできるのです。
債券の利回りは、リスクに対する通信簿なのです。

リスク評価と債券の価格・利回りの関係 「板前FP雑記帳」作成

3:金利上昇にも関わらずに進行する円安

お金は本来、金利の低いほうから高いほうへと流れていきます。
金利の高い国の通貨で運用、つまりは貸し出したり債券を買ったりすれば、リターンとして高い金利を受け取ることができるからです。
そして長期金利の「経済の体温計」という側面から見れば、金利の上昇は経済が活発になり資金への需要が増していることの現れと考えることができます。
こうしたことを当てはめれば、金利が上がればその通貨は為替相場において値上がりするはずです。

しかし現在の日本市場では、長期金利が上昇しているにも関わらず、円安が進行しているのです。

実は金利の上昇には、経済の好況を反映した「良い金利上昇」と、財政悪化への懸念や加熱しすぎた経済の引き締めによっておこる「悪い金利上昇」があるのです。

日本の長期金利とドル円相場の推移 「板前FP雑記帳」作成
「円」は市場での信用を失いつつある

ここまで国債の利回りとリスク評価の関係について解説してきたように、現在の長期金利の上昇は経済の先行きに対する期待からではなく、日本の財政への信用リスクが高まっているという評価によるものだということができます。

財政悪化に対する不安、高市政権となって公表された総合経済対策の効果への疑問符、そして「金利をあげるのはアホやと思う」という発言に代表される日銀の独立性が損なわれるのではないかという不透明感。

つまりは日本の通貨への信用の低下が、為替相場における「円」の価値を押し下げているのだということができます。

構造的な円安圧力 ①円キャリートレード

日本の財政への信用が低下していることに加えて、為替市場には円を下押しする構造的な要因があります。

その一つが、「円キャリートレード」です。
「キャリートレード」とは、金利が低い国の通貨を借りて、それを金利が高い国の通貨に換えて運用する投資戦略のことです。

日本と海外の主要国との間には、依然として大きな金利差があります。
例えば、円を借りてそれをドルに換えて運用する場合、そこには「円を売る/ドルを買う」という取引が必ず介在します。

このように現在の為替市場には、機関投資家などによる継続的な円売り圧力が働いているのです。

構造的な円安圧力 ②日銀のジレンマ

それでは日銀が円安解消のために急速に利上げを進めればよいのかと言えば、なかなかそうもいきません。

ここでもやはり、日本の財政がネックとなります。

日本国債の発行残高はすでに1,000兆円を超え、仮にわずか1%の利上げだとしても、発生する利払い費の額は膨大なものとなります。
そうなれば日本の財政はさらに悪化し、デフォルトに陥るリスクの高まりは急激な円安を招く恐れがあります。

日本の金融政策は非常に難しいかじ取りを迫られている、と言えます。

まとめ:10年物国債の利回りは、最も重要な金融指標の一つ

ここまで、長期金利、そしてその代表格である10年物国債の利回りについて解説してきました。

普通に暮らしていると10年物国債の利回りを意識することはないかもしれませんが、ファイナンスの世界では最も重要な指標の一つとされています。
その理由は以下の通りです。

  • 10年物国債の利回りは、安全な資産から得られる収益である「無リスク金利」を示す指標であり、これを基準としてそのほかのリスクのある金融商品の価格が決まっていくと考えられている。
  • 企業等の事業計画においては中長期的な資金調達の基準であり、将来における景気や物価の見通しを反映し、市場参加者の投資判断に大きな影響を与える。
  • 銀行が提供する住宅ローン(特に固定金利)は長期金利を参考に設定されており、長期金利の上昇によって家計の負担が増える可能性がある。

今仕込んでいるカラスミが出来上がるのは、おそらく年末繁忙期の真っただ中。
自分もおそらく忙しい日々を過ごしているはずです。
そしてその先に待っている年末年始・・・。

特別なことは望みません。
一年間よく働いた、色々あったけど無事に年を越せたと、のんびり正月を迎えられたらと思います。

そして、そういう普通の暮らしを守るためにこそ、長期金利など基本的な金融の知識を学ぶ必要があるかもしれないと、このブログを読んで少しでも思ってくれればうれしいです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。