「カマスの焼き食い、一升飯」
焼いたカマスは米が一升食べれるほどおいしい、という意味の言い回しです。
少し大げさなんじゃないかとは思いますが、焼き魚としてのカマスの美味しさと、それがいかに庶民に親しまれてきたのかをよく表している言葉です。
日本の食文化の中でも古い歴史を持つカマスですが、例えば大衆魚の代表格であるアジやイワシのように、一年中スーパーに並ぶというわけでもない気がします。
どちらかというと干物のほうが消費者にとっては一般的かもしれませんね。
お店でもよくカマスの一夜干しを作ります。

もともとは食料の保存性を高めるための干物づくりですが、冷蔵・冷凍などの技術が進んだ現代においては、保存よりもむしろ食材の旨味を高めるという点にスポットライトが当たることが多いようです。
カマスの一夜干しは、もちろん現代の食卓においてもご飯のお供にぴったりです。
どのように社会が変わっても、私たちが身近に感じるもの、日常の支えとなるようなものは、そんなに変わらないのかもしれませんね。
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前回のブログでは、長期金利(10年物国債の利回り)の重要性について解説しました。
長期金利の変動は、市場参加者の投資判断に直結するだけでなく、住宅ローンの金利など私たちの日常にも大きな影響を与えます。
日本の財政悪化への懸念による長期金利(10年物国債の利回り)の上昇を反映し、銀行が提供する固定型の住宅ローンはじわじわと引き上げられています。
今回のブログでは、長期金利と住宅ローンの関係や、固定金利・変動金利それぞれの持つリスク、さらには金利上昇局面において考えられる出口戦略について書いていきたいと思います。
1:長期金利と連動する「固定金利」
銀行が提供する住宅ローンには「固定金利」と「変動金利」に大きく分かれ、それぞれが全く異なる基準に基づいて金利が設定されています。
何が違うのかと言えば、それは銀行の資金調達の仕組みです。
銀行は「長期的な資金調達のコスト」に基づいて固定金利を設定する
固定金利は、全期もしくは一定期間など、契約時に定めた期間の借入金利を固定するものです。
銀行では日々たくさんの資金がやり取りされていますが、そういったお金は湯水のように湧いてくるわけではありません。
銀行が資金を貸し出す際には、その貸し出すための資金をどこからか調達してくる必要があります。
固定金利、つまりは変わらない金利で長期間の貸し出しをするためには、銀行側も将来にわたって金利が変わらない資金を調達する、あるいは長期の金利リスクを回避しながら資金を調達する必要があるのです。
例えば長期の社債を発行したり、あるいは銀行同士で資金の貸し借りをしたりする(その際に金利スワップ等で将来の金利に対するリスクヘッジをしたりします)のですが、固定金利の住宅ローンのように長期的な貸し出しのための資金調達のコストの基準となっているのが、10年物国債の利回りなのです。
簡単に言うと、例えば10年物国債の利回りが上昇した場合には、「国が10年間お金を借りるコスト(長期金利)が上がっているから、自分たちが将来にわたって資金を調達するためのコストも上がるだろう」と金融機関が判断して、最終的に住宅ローンの固定金利にも反映される、というわけです。
実際、このところの長期金利(10年物国債の利回り)の上昇を受け、大手五行による12月からの10年固定型の住宅ローンの引き上げが相次いでいます。
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2:変動金利 「低金利神話」はどうなる?
住宅ローンの変動金利型は、市場金利の変動に合わせて適用金利が半年ごとに見直される金利タイプのローンです。
他の金利タイプと比べて金利が低く有利という認識が定着し、住宅ローンを利用する人のうち最も多くの人が選択するのが、この変動金利型です。

変動金利型の基準「短期プライムレート」と今後の金利変動要因
住宅ローンの固定金利型が長期の資金調達コストを基準としているのに対し、半年ごとに金利が見直される変動金利型は、短期的な資金調達のコストを反映しています。
その金利設定の基準となるのが、優良企業に対して短期間に貸し出す際の優遇金利である「短期プライムレート」です。
こうした短期間の資金のやり取りにかかる金利は、日銀が設定する政策金利の影響を強く受けます。
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日本の金融政策は長くゼロ金利政策・マイナス金利政策が採られてきたため、無担保コール翌日物に代表される銀行による短期間の資金調達コスト(短期金利)は極めて低く抑えられてきました。
住宅ローンの変動金利型の金利が他の金利タイプと比べて低く設定されてきたのには、こうした背景があったのです。
2024年3月、日銀はマイナス金利政策を解除し17年ぶりに金利の引き上げを行いました。私たちの社会はすでに「金利のある世界」への転換を迎えていると言えます。
そして日銀の植田和夫総裁は先日の講演で利上げ再開に意欲を見せ、市場ではすでに利上げを織り込んだ動きが広がっています。
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こうした日銀の金融政策の動きは、住宅ローンの変動金利が上昇するトリガーとなるのです。
変動金利型が抱えるリスク「5年ルールと125%ルール」
すでに触れたように、変動金利型では半年に一度金利が見直されます。
ですが見直された金利はすぐに支払額に反映されるわけではありません。
借入から5年後、10年後、と契約で定められた期間で実際の返済額の見直しが行われます。
つまり、金利の見直しと、それが実際の返済額に反映されるまでの間にはタイムラグが生じるのです。
そして毎月の返済額の引き上げ幅にも、元の返済額の125%までという上限が設けられています。
こうした住宅ローンの借り手の急激な負担増を防ぐための措置が、潜在的なリスクを抱えていることに留意する必要があります。
- 金利が上がっても5年間は支払額が変わらないため、毎月の返済額のうち、利息の支払いに充てられる割合が増える。
- 利息の支払いが増えるとローンの元本がなかなか減らず、支払総額が増える。
- 激しい政策金利上昇があった場合、支払額がすべて利息に充てられても足りず、未払い利息が発生し、借金の元本が全く減らない・または増えてしまう恐れがある。
現在のように物価が上昇している状況であっても住宅ローンの支払額が急激に上がらないように設計されていることは、安心材料であると同時に総支払額が増えてしまうリスクもあるということですね。
最後の「激しい政策金利の上昇」は、実際に起こることは考えづらい想定ですが、そうしたリスクもあるのだということを想定して、ローンの金利タイプの選択や毎月の返済額の設定に活かすことはとても大切なことです。
3:金利上昇局面において生活防衛の為に採りうる出口戦略
住宅ローンは、マイホームという日常の安定を資金面で支えてくれる一方で、長期間にわたって負債を抱えるというリスクでもあります。
「金利のある世界」では、物価や景気の状況によって金利が上昇するという可能性に対する備えや戦略を理解しておくことがとても重要になります。
ここでは住宅ローンの借り手が、将来の金利上昇リスクに備えるための出口戦略について考えていきたいと思います。
①繰り上げ返済
繰り上げ返済とは、ローンの元金の残り全部、または一部を前倒しで返済することです。
元本を減らすことで、本来はその元本にかかるはずだった利息の支払いもなくすことができます。
一部繰り上げ返済には、毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する「期間短縮型」と、返済期間は変えずに毎月の支払額を軽減する「返済額軽減型」があります。
一般的に、「期間短縮型」のほうが利息軽減に対する効果は大きくなります。
ですが「返済額軽減型」には住宅ローンに関する毎月の家計負担を軽減できるというメリットもあります。
- 支払総額を減らしたい・できるだけ早く完済したい→→→期間短縮型
- 物価高、あるいは教育や介護の費用がかさんで生活が苦しい・転職等による収入減に対応したい→→→返済額軽減型
繰り上げ返済をする目的によって、その目的にかなうタイプを選ぶことが重要です。
変動金利型の住宅ローンを利用している人が将来における金利上昇リスクに対応するには、利息負担の軽減効果が大きい期間短縮型を選ぶべきだと思われます。
ですが、足元で金利が上昇している局面で繰り上げ返済を行うと、そのタイミングでの金利見直しが行われて、結果として毎月の支払額がかえって増えてしまう(上昇した金利が適用される)可能性もあります。
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繰り上げ返済を行う際には、そのタイミングやその後の金利など、事前に金融機関と相談して確認するのが賢明です。
②金利タイプの切り替え・他行への借り換え
住宅ローンの返済期間は約30~35年が一般的です。
期間が長い分だけ、将来の見通しについて予測をたてることは難しくなります。
自分が選んだ金利タイプが、時間の経過とともに自分自身の事情や金利の変動などの経済の状況にそぐわなくなることは、往々にして考えられることです。
そのような場合、金利タイプの切り替えや他行への借り換えが返済の負担を減らす効果的な選択になることがあります。
住宅ローンのような変返済期間の長いローンでは、わずかな金利の差が支払総額に大きな違いを生むことになるからです。
・金利タイプの切り替え・・・同じ銀行で、住宅ローンの金利タイプを変動型から固定型というように変更できる場合があります。
他行への借り換えより手続きも簡単で、将来の金利変動リスクに備えることができます。
金融機関がそれぞれにルールを設けていますが、固定金利期間中は切り替えができないのが一般的です。また、金利タイプの切り替えには手数料等がかかる場合もあります。
・他行への借り換え・・・現在の銀行よりも金利が低いローンを提供している銀行に借り換えることで、利息負担を減らすことができます。
また固定期間中で同じ銀行での金利タイプの切り替えができない場合、他行への借り換えで金利タイプを変更することができます。
ただし借り換えには、事務手数料・保証料・登記費用などの諸経費が数十万円単位で発生します。
費用対効果をきちんと検証する必要があるでしょう。
③あえて資金を手元に残す
繰り上げ返済、金利タイプの切り替え・他行への借り換えといった、比較的オーソドックスなものとは異なる戦略も検討すべきです。
それは繰り上げ返済などのための資金をあえて手元に残し、NISAなどで長期運用するというもの。
- 借入金利≪運用利回り
住宅ローンの金利よりも高い利回りで長期運用できる見込みがある場合、繰り上げ返済に回す資金を投資に向けたほうが効率的に資産を増やすことができます。
現在の日本のようにインフレが進むと、現金・預貯金といったお金の価値は目減りしていきます。
これは借金の元本も同様です。
そして相対的にモノ・サービスの価値は高まっていきます。
資産を現金で固めておくよりも、成長が見込める金融商品や資産に投資をしたほうが有利に働くことが多いのです。
ただし、投資には元本割れのリスクがあります。
株式や投資信託などの金融商品の価格は、市場の動向によって上下し正確に予測することは困難です。
長期的な視野に立って投資のリスクを引き受けることができる人向けの戦略です。
まとめ:金利に対する理解が日常の支えとなる
住宅ローンについて書くとなると、どうしても変動金利型・固定型といった金利タイプを比較して書くことになります。
ですが当然のことながら、どちらかのタイプが絶対的に正しく、有利というわけではありません。
変動金利型は現在の低金利の恩恵を享受できる代わりに、将来の金利変動リスクを引き受ける必要があります。
比較すると高くなる固定型の金利は、将来のリスクを銀行に引きけてもらう安心料という見方もできるのです。
人間は、将来について思い悩むという稀有な特質をもった生き物です。
普段の暮らしの中に悩みの種は尽きません。
ですが焼いたカマスと白いご飯を食べている時間くらいは、ほっと一息ついて将来への糧としたいものです。
先のことはわかりません。
ですが私たちの日々の暮らしの中から干物づくりのような知恵と技術が生まれたように、金利などのファイナンスに関する知識を身に付けることやリスクに備えるための「出口戦略」を持つこともまた、そうした日常を守るための支えとなってくれるはずです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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