板前FP雑記帳

板前として「働くFP」からの、普通の暮らしを守るためのいくつかのヒント。

【まかないレシピ】FP目線で語る黄金比レシピの優位性:「鶏の味噌バター煮」の巻

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「仕事はまかない作りで覚えるもの」

駆け出しのころ先輩に言われた言葉です。
お店のメニューには、たいていの場合レシピがあります。
メニューを作る責任ある立場の人たちが、使うべき食材や調味料、そして手順まで答えを出してくれます。
ですが「まかない」は、そうはいきません。
何を使って何を作るか、自分で答えを出さなくてはなりません。

まかないのために使える食材や時間も限られていますし、だからと言って毎日同じものを出すわけにもいきません。
10人、20人分の食事を行き当たりばったりで作ろうとすれば、出来上がりが適当になるか時間が押してしまうか、なんにせよ上手くはいきません。

下調べも大事、段取りも大事です。
面倒でもありますが、まかない作りは自分の「引き出し」という資産を増やす絶好の場でもあり、アイデアと技術を試すテスト運用の場でもあるのです。

そんな実践と学びの場であるまかない作りを助けてくれる、心強い味方が「黄金比」といわれる、合わせ調味料です。

このブログは、いわゆる「料理ブログ」ではありません。
調理場で働く人間が書くFPブログという、実にけったいなブログです。
今回はけったいなブログらしく、「黄金比レシピ」の優れている点をファイナンシャルプランニングの視点から見ていきたいと思います。



再現性という資産をその手に。「黄金比レシピ」のメリット

将来の資金不足や現在のインフレへの不安から、投資への関心が高まっている昨今。
できるだけコストやリスクをおさえながら成長というリターンを得ようと、多くの人がNISAを活用して「インデックスファンド」に投資しています。

そうした心の機微は、厨房においてもまったく同じです。
私たちは時間や周囲からの期待というプレッシャーに押されながら、できる限り手間をかけずに「美味しいまかない」というリターンを手にするために、黄金比レシピを活用するのです。

目分量で調理する姿は、スマートに見えるかもしれません。
ですがそれでは、相場の雰囲気や勘だけで株の売買を繰り返すのと変わりません。
「良いときは良い、悪いときは悪い」、資産運用もまかない作りも、それでは困ります。

ファンドマネージャーが投資信託を日経平均やsp500に連動させるように、私たちはまかないの一皿に再現性というアプローチで取り組んでいく必要があるのです。

メリット①:ボラティリティの抑制

ボラティリティとは株式や為替などの「価格の振れ幅(変動の度合い)」のことです。
黄金比レシピには、こうしたボラティリティ、つまり味のブレをおさえる働きがあります。
「前回は美味しかったのに、今日のは味がボケている」といった味の乱高下を防いでくれるのです。

メリット②:埋没費用(サンクコスト)の削減

「すでに発生していて取り戻すことはできないコスト」のことを埋没費用(サンクコスト)といいます。
味が決まらず、「何か違うな」と思いながら調味料をあれこれ足していく時間や労力が、これにあたります。

黄金比なら、調合一発。
もはや迷うことはありません。

迷わず行けよ、行けばわかるさ。

メリット③:アセットアロケーション(資産配分)を自在に

黄金比レシピのもう一つの強みは、微調整のしやすさにあります。

目分量で作った料理は、「何がどれだけ入っているか」が不明確なため、味が決まらなかったときに正しい修正ができません。
投資において資産配分が明確でない場合、リスク管理が難しく予期せぬ市場変動で大きな損失を被る可能性があります。
これは投資ではなく、もはや投機(ギャンブル)です。

しかし「味噌○○グラム、砂糖△△グラム」のように資産配分がしっかり管理(ポートフォリオ化)されていれば、「もう少し甘みを抑えよう」「汗ばむ時期になってきたから塩分を立たせよう」といったピンポイントの微調整が実行できるようになります。

ファイナンスの世界でも、「株式の比率を落として債券を増やし、リスクを抑えよう」というように、自分の事情や市場の動向に合わせてアセットアロケーション(資産配分)を変更することはとても重要です。
「黄金比」という明確な数字のベースがあるからこそ、こうしたコントロールが可能になるのです。

まかないレシピ「鶏の味噌バター煮」

前置きが長くなりましたが、いよいよ実践にはいります。
今回はランチの定番である「サバの味噌煮」を、鶏肉に横展開してみましょう。

鶏肉はまかない作りの強い味方です。
牛肉や海老(「AI」「半導体」関連株)のような華やかさはないかもしれません。
しかし単価が割安で価格も年間を通して安定している鶏肉は、厨房におけるディフェンシブ銘柄の代表と言えます。
さらに加熱調理によって引き立つ適度な脂と上質な旨味は、鶏肉が単に安いだけではない、「投資利益率(ROI)」に優れた食材であることの証明です。

準備編:ポートフォリオ(食材と味噌だれ)

まずは本日のまかないを構成する資産(食材)を確認します。
家庭でも作りやすいように、メインの鶏もも肉を2枚とします。

【材料】

  • 鶏もも肉(2枚:約500~600g)・・・煮込むと縮むため、一口大より少し大きめにカット。
  • 長ネギ(1本)・・・3~4センチのぶつ切りに。
  • 厚揚げやナス・ピーマンなど(あれば)・・・冷蔵庫に眠る遊休資産である残り野菜や厚揚げをREIT(不動産投資信託)のように組み込み、ポートフォリオ全体の実入りを安定(かさ増し)させます。味噌だれとの相性も◎。食材の分散投資によって、食感や栄養の偏りというリスクを抑える効果も。

【味噌だれ】
調味料はすべて「重さ(グラム)」に換算します。
お店で10人以上のまかないを作るのに「大さじ・小さじ」での計量はかえって面倒ですし、計量カップの目盛りで味噌を測るのは想像するだけで肩がこりそうです。

家庭においても、粘度や形状の違う複数の調味料を合わせる場合はキッチンスケール(電子はかり)で重さをはかる方が圧倒的に楽ではないかと思います。
そしてなにより誤差もありません。


※表は横にスクロールできます


味噌だれ調味料 重さの比率 グラム(鶏肉2枚分) 備考
- 150g 煮詰めるので少なめでOK
味噌 6 60g 種類は何でもOK。赤・合わせ推奨
5 50g 肉を柔らかく
砂糖 3 30g 鶏肉は甘めが合う
みりん 3 30g 照りとコク出し
醤油 1 10g 味の引き締め(小さじ2程度)
おろし生姜 - 10g〜 チューブでも生でもたっぷりと
おろしニンニク - 5g まかないならパンチを出してOK

味の要となる「味噌・酒・砂糖・みりん・醤油」は、重さの比率で【6:5:3:3:1】となるように設計しています。体積(大さじなど)ではなく、重さでこの比率を守ることが、味のブレを完全に防ぐ最強の防衛策になります。


【現場のワンポイント】

味噌が溶け残らないよう、泡立て器でしっかり混ぜて「液体」にしておくこと。ここでダマを残すと、鍋に入れたときに味のムラ(運用成績のバラつき)に直結します。

実践編:運用レポート(調理の3ステップ)

ただ煮るだけではありません。
鯖味噌との決定的な違いは、「焼いてから煮る」というアプローチ。
お店の味へと引き上げます。

ステップ①:(先行投資):皮目をパリッと焼く

鶏肉から出る脂を考慮して、フライパンに油は引きません。
皮目を下にして並べ、強めの中火でこんがりと焼き色を付けます。
「チリチリ…」という小気味よい音が鳴り始め、鶏の脂がにじみ出てきます。
この香ばしい焼き色が、余分な脂の臭みを消し、味噌だれが絡む土台となります。
煮込み料理の旨味というリターンを最大化するための先行投資です。

皮目がきつね色になったら裏返し、空いたスペースに厚揚げや野菜などを入れて一緒に焼きます。
余分な脂(不良債権)はペーパーで拭き取りましょう。

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ステップ②(リスクヘッジ):落し蓋をして蒸し煮

先ほどの合わせ調味料を流し入れます。

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鍋肌で味噌だれがふつふつと煮えてきたら火を弱め、アクを取ってアルミホイルなどで落し蓋を。
7~8分ほど煮込み、ゆっくり火を入れます。

鶏肉は強火で長時間煮ると固くパサパサに。
水分と旨味のキャピタルフライト(資産逃避)というリスクを回避すべく、蒸し煮にして柔らかさを保ちます。

ステップ③(コア・サテライト戦略):バターという高配当調味料を組み入れる

蓋を取り、少しの間強火にして煮汁を肉に絡ませましょう。
ほんのりとろみがついたら火を止めます。

ここで大切な仕上げ、バターを落とします。
余熱によってバターの風味が静かに溶け出し、その香りと油分が味噌に特有の塩味という「角」を取り、まろやかで芳醇な味噌バターへと昇華させるのです。

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黄金比の味噌だれという「コア資産」と、バターという「サテライト資産」の相乗効果が、「ご飯が進む」という流動性を高め、キッチンに立つあなたの胃袋を満たしていきます。
好みで黒コショウ、あるいは七味唐辛子を小ネギと共に振ると、味と見た目がキリっと引き締まります。

まとめ:レシピも資産形成も「仕組み化」があなたを救う

いかにも経験豊富な板前が目分量で料理をする姿は、経験や勘を頼りに「相場の山や谷」を読む相場師の姿に重なります。
そうした姿に、憧れを抱く人もいるでしょう。
しかしながら、買値と売値の利ザヤで稼ぐ相場師というものは、何か実物を手に取り取引するということはありません。

私たちの体は、私たちの食べたもので出来ています。
手にした食材を、私たちの血や肉、そして日々の喜びへと変えていくキッチンの風景に、投機(ギャンブル)の興奮や失望はなじみません。

キッチンスケールと向き合いながら計量をするという作業に、華やかさを感じることはないでしょう。
慣れないうちは、面倒だと感じることも多いはず。
しかし積立投資と同様に、一度「仕組み化」してしまえば、レシピのバリエーションという資産が少しずつ増えていきます。

利息が利息を生む仕組みのことを「複利」といいます。
このレシピも複利のように、アレンジによって「豚バラ大根」や「茄子とピーマンの鍋しぎ」といった新たなレシピを生む源になるのです。

自分や大切な人の胃袋を満たすだけでなく、そのレシピを共有することによって、そのリターンを最大化することも可能です。
今日のまかない、あるいは晩御飯のおかず、まずはボウルをキッチンスケールに乗せるところから始めてみませんか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。



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