板前FP雑記帳

板前として「働くFP」からの、普通の暮らしを守るためのいくつかのヒント。

収入が増えても貯金ゼロ?新社会人のための「家計の黄金比」と「パーキンソンの法則」

©板前FP雑記帳

家計にも、「黄金比」と呼ばれるものがあります。

家計における支出を、「5:3:2」の割合で必要なもの/欲しいもの/貯蓄・投資に分類するというもの。
アメリカの政治家であるエリザベス・ウォーレン氏が提唱したもので、日本でも広く知られています。

"新社会人向けの理想の家計バランス「黄金比」の円グラフ。手取り30万円のモデルケース(生活費50%:15万円、娯楽費30%:9万円、貯蓄・投資20%:6万円)を示した図解"
©板前FP雑記帳

図のように手取り30万円であれば、生活費15万円:娯楽費9万円:貯蓄6万円という目安になります。
こうした比率は誰にでも当てはまるものではありませんが、家計の黄金比にはいくつかの優れた点があります。

  • 家計の支出を見直す「物差し」…黄金比と自分の家計を比較することで、何に使いすぎているのかが一目でわかります。
  • 強制貯蓄…収入から「貯蓄・投資」分を先取りすることで、確実にお金を貯めることができます。
  • わかりやすい…項目が細分化されていないため、管理が容易です。

料理における黄金比といえば、味が決まる合わせ調味料のことを言うようです。

サバの味噌煮であれ、豚の角煮であれ、「美味しい」と感じる調味料の割合を数値化しておけば、作るたびに味がブレたり、味見を繰り返して迷走することもありません。
なにより、人にも教えやすい。
再現性の高いレシピというのはありがたいものです。
また割合を数値化していくことで、「少し甘すぎたかな」といった振り返りも、「仕上げに酢を回してみよう」といった微調整も簡単になります。

さきほど「家計の黄金比は、誰にでも当てはまるものではない」とお伝えしましたが、味に好みの違いがあるように、家計にもその人や家庭ごとの事情が優先順位があります。
しかし、だからといって毎回その場しのぎの目分量・どんぶり勘定で良いということにはなりません。

ブレがなく安定した成果(貯蓄や投資による資産形成)を形にするためには、レシピと段取りが必要だということも、料理と家計管理に共通している点のようです。

今回の記事では、「貯金ができない人」の行動心理と、それを防ぐための仕組み(レシピ)作りと段取りについて解説していきます。

「お金が貯まらない人」の共通点:パーキンソンの第2法則

「パーキンソンの法則」をご存じでしょうか?
英国の歴史・政治学者であるパーキンソン氏が提唱したもので、ビジネス研修(タスク管理・生産性向上など)では必ずと言っていいほど登場する重要な法則です。

  1. 「仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する」
  2. 「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」

ざっくりと分かりやすく言えば、人間というものは1週間の期限があれば3日で終わる仕事にも1週間かけるし、お金を持っていればあるだけ使ってしまうものだ、ということですね。

「収入は増えているのに貯金ができない」
「家計簿をつけているけど、何を削れば良いのかわからない」
「気がつけばいつもカツカツ」

家計相談の現場ではよく見かける「あるある」に分類される悩みですが、こうした悩みはパーキンソンの第2法則を体現したものだと言うこともできます。

いくつか共通する問題点を洗い出してみましょう。

①生活水準を上げてしまう

収入が増えると「自由に使えるお金が増えた」という思いが強くなり、贅沢が日常化してしまいがちです。
増えた収入に合わせて生活水準を無意識のうちに上げてしまう現象を、ライフスタイル・クリープ(生活水準の忍び寄り)と呼びます。

スーパーで食材を買う時に、少し高いものを選ぶようになる。
外食の単価が上がる。
1つひとつの金額は大したことないものでも、「チリも積もれば」で増えたはずの収入をあっという間に食いつぶしてしまうのです。

②「残った分を貯金しよう」としている

収入が増えると「余裕ができたから、自然とお金が貯まるはずだ」と錯覚しがちなもの。
しかし先ほどのパーキンソンの第2法則にもある通り、人間というものは手元にあるお金を使える上限と認識してしまう生き物なのです。

積立投資のように、給料日に自動的に他口座に引き落とす「先取り貯蓄」を仕組み化していない場合、月末に残高が残っている可能性は少ないのではないでしょうか。

③固定費のグレードアップ

外食などの変動費よりも深刻なダメージを残すのが、このパターンです。
収入が増えた段階で、家賃の高い部屋へと引っ越す、高級車へ乗り換える、最新のiPhoneを分割払いで買い、高いキャリアプランを契約してしまうなど・・・。
こうした利便性の追求やステータスの確認作業には、多くの場合で(時には割に合わない)高い出費が伴います。

一度上げてしまった生活水準を下げることは心理的にも難しく、貯蓄体質からは遠ざかることになるでしょう。

④「ご褒美支出」のハードルが下がる

歯ブラシや洗剤、トイレットペーパーなどの日用品を買うためのお金。
自分へのご褒美として、人気のパティスリーに並んでケーキを買うためのお金。
人間は無意識のうちに、同じお金を、使い道や稼いだ方法によって心理的に色分けしています。

行動経済学においてメンタル・アカウンティング(心の会計)といわれるこうした行為は、お金を目的ごとに分けることで家計管理を容易にする一方で、臨時収入を「あぶく銭」として浪費するような非合理的な行動の原因になることも。

「給料(ボーナス)が増えたから」と、収入アップを理由にしたご褒美支出が常態化してしまうのもよくあるケースではないでしょうか。
頑張った対価として楽しみを持つことは大切ですが、「ご褒美予算」として家計の中に組み込まれていないどんぶり勘定になってしまうと、ご褒美のはずがキャッシュフローを圧迫する苦痛の原因に変わってしまうのです。

「貯蓄体質」へ体質改善の処方箋:先取り貯蓄と予算の固定化

ここまで、「お金が貯まらない人」に共通する傾向を4つ挙げてきましたが、自分に当てはめてみていかがでしょうか?
ちなみに筆者はこの4つすべてに思い当たるふしがあります。
いつもの晩酌のウィスキーが気がつけばグレードアップしていたり、よくよく考えてみればあまりメリットのないゴールドカードの年会費を惰性で払い続けていたり・・・。

こうした共通点は、誰もが陥りやすい罠でもあるのです。

例えばこの春に新社会人になった人たちは投資や資産形成について関心が高く、自分が10代や20代の頃と比べてはるかに高い金融リテラシーを持っていると思われます。
しかしそれでも使えるお金が増えると、ついつい「このくらいは大丈夫」と使ってしまうのが人間というもの。
かくいう自分も20代の頃は全く貯金ができませんでした。

こうした人間の心理や行動の傾向を、否定して気合で乗り越えるのではなく、理解したうえで仕組みを作ることが重要です。
罠に落ちることを回避する、あるいは乗り越えるために最も効果的な方法は、「先取り貯蓄の仕組み化」「予算枠の固定化」なのです。
収入が増えたとしても生活水準をむやみに上げず、生み出した余剰金を別口座に移してプールする。
頭ではわかっていても、これを実際にキャッシュフローに落とし込んで実行に移せる人は、決して多くはありません。

実行に移すことが難しいならば、自分の意志で実行せずに済む仕組みを作ってしまう方が合理的であると言えます。
この「仕組み化」による、家計改善のための5つのステップを見ていきましょう。

ステップ①:ゴールを設定する

何のために家計を改善したいのか、まずはその目的を明確にしましょう。

「とりあえず100万円貯めてみたい」
「○○年までに借金を完済して自由になりたい」
「40歳までに独立して自分の店を持ちたい」
「海外留学の資金を貯めたい」

「将来が不安だから」といった漠然としたものよりは、ちょっと単純かなと思うようなものであっても、具体的な目標がある方が効果的です。

ステップ②:キャッシュフローの評価、改善点を洗い出す

まずは、クレジットカードや銀行の引き落とし口座の明細から、家計における支出を全て洗い出してみましょう。

冒頭で紹介した「黄金比」が、ご自分の家計のキャッシュフロー(お金の出入り)を評価するのに役立ちます。
全てを黄金比にきっちり当てはめる必要はありません。
料理であれば「ちょっと塩辛いな」とか「甘みがくどく感じる」と味見するように、ご自分の家計を黄金比と比較してみて突出してはみ出している支出の項目があれば、それが優先的に改善するべき課題である、ということになります。

「お金が貯められない」という悩みがあるということは、自分の家計のどこかに問題があることをすでに認識しているということです。
その問題はどこにあるのか、原因は何かをあぶりだすことで、どのような仕組みを作れば良いのかがはっきりしてきます。

ステップ③:「先取り」する貯蓄額と、各項目の「予算枠」を決める

黄金比によるキャッシュフローの評価をもとに、予算を振り分けていきます。
食費・日用品、外食のような娯楽や趣味のためのお金など、毎月の変動費に上限を設け、収入が上がってもむやみにその枠を広げないようにすること。
そのうえで、毎月いくらの資金を貯蓄や投資のために回すのかをきちんと決めましょう。

「自分へのご褒美」のような息抜きのためのお金も、もれなく予算化しておきましょう。
どんぶり勘定ではなく、使えるお金の上限を決めて罪悪感なく使い切ることが、息切れしないためのコツでもあります。

ステップ④:口座を「使う」「貯める」で分離する

パーキンソンの第2法則を思い出してください。
給与が振り込まれる口座に、すべてのお金を入れっぱなしにしてはいけません。
以下のように、銀行の口座を目的ごとに分けることが重要です。

  • A口座…給料が振り込まれ、生活のための固定費や、外食費などの変動費をやりくりするための口座。
  • B口座…自分で決めた目標や、将来自由に使えるお金を育てるための口座。

ステップ⑤…資金の移動を「自動化」する

A口座からB口座への振替を手作業で行おうとすれば、多くの場合、挫折します。

「将来の目標よりも今の自分へのご褒美(現在バイアス)」
「来月はきっと貯蓄できるから、今月はいいや(確証バイアス・楽観バイアス)」

行動経済学的に見て、私たちは本来その心理や行動に様々な「偏りや先入観(バイアス)」をもった生き物なのだということを理解しましょう。
積立貯蓄(投資)やネット銀行の自動入金サービスなどを利用して、給料が振り込まれるA口座から、将来のためのB口座へ決めた金額が毎月自動的に引き落とされる仕組みを作りましょう。



手数料無料!松井証券のNISA

家計管理も「段取り」が大切

以前のブログでも紹介しましたが、「板前仕事は段取り八割」とよく言われます。

毎朝、市場から魚が届きます。
開店前の店内に積みあがった発泡スチロール、しかし扱う食材は魚だけではありません。
色々なジャンルの料理を楽しめるのが居酒屋の醍醐味ですから、野菜も肉も、その料理に合わせた下処理をしていくわけです。

食材の仕込み、お店の片づけ、ランチ営業・・・。マルチタスクといえば聞こえは良いものの、忙しさに任せて考えなしに仕事に手を付けていけば、何も形にならずにあっという間に詰んでしまいます。
そうならないためには、仕事をスムーズに進められる順序や手順を確認し、必要な準備と手配をしておくこと、つまり「段取り」が重要だということですね。

家計管理にも同じことが言えます。
一度「我が家の黄金比」を算出し、自動的に貯蓄に回る「仕組み(仕込み)」を作ってしまえば、あとはどうすれば予算の枠内で生活できるかを考えれば良いのです。

毎日レシートと睨めっこして、気合や我慢を重ねるだけでは成功しません。
これまでも貯金しようとしてうまくいかなかったのは、あなたの意志が弱いからではないのです。
食材にそれぞれ特徴があるように、人間の心理や行動の傾向を理解して「仕組み」を作ることが大切です。
「パーキンソンの法則」や数々の「バイアス」といった人間の心理を逆手に取り、自動的に黒字を生み出す体質へと改善していくこと。
それが、豊かなライフプランを実現するための強力な土台になります。

まずは今週末、現状の「味見(家計の洗い出し)」をするところから始めてみませんか?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

【資産運用】
itamaefp.com
【保険・年金・税金】 
itamaefp.com
【板前FP】
にほんブログ村 経営ブログ ファイナンシャルプランナーへ
にほんブログ村

">