板前FP雑記帳

板前として「働くFP」からの、普通の暮らしを守るためのいくつかのヒント。

政策金利0.75%で住宅ローンはどうなる?「変動金利」のまま耐えるべき人の3つの条件と借り換えシミュレーション

「変動金利…時価」「借り換え相談うけたまわります」と書かれたお品書きがある、板前FPのカウンター風景
©板前FP雑記帳

金利の引き上げに関するニュースを見るたびに、毎月の住宅ローンの返済がどうなるのか、不安になっている人も多いのではないでしょうか。

カウンター越しに聞こえてくるお客様同士の会話でも、「住宅ローンの金利」の話題は本当に多くなりました。
実際、「銀行からキャンペーンの案内が来た」、「固定金利に乗り換えるべきかどうか悩んでいる」という声はよく聞きますし、相談に乗ることもあります。

私自身も仕込みがひと段落した合間にニュースをチェックするたび、先行きの不透明さを痛感しています。
イラン情勢に原油高、株価の乱高下に止まらない物価高など……。
日々の生活と将来を守ろうと奮闘する人にとって、家計に直結する住宅ローンの金利は決して無視できない大きな問題です。

住宅・教育・老後の、いわゆる「人生の3大資金」の中でも、住宅ローンは数千万円規模の長期的な負債です。
金利とそれに伴う利払い費の変動は、家計や将来の人生設計に大きな影響を与えます。

ですが、FPの視点からお伝えすると、「すでに金利が上がってから慌てて固定に切り替える」というのは、利払い費が増えてかえって損をする可能性が高い行動でもあるのです。

今回の記事では、「借り換えるべきか、変動のままでいくべきか」で毎日悩む人のために、後悔しない判断をするための基準を以下のポイントで解説していきます。

  • なぜ「慌てて固定への借り換え」が損をするのか
  • 借り換えのメリットが出る「損益分岐点」のシミュレーション
  • 変動金利のまま「耐えるべき人」の3つの条件

ご自身の家計と照らし合わせながら、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

1:「金利が上がってから慌てて固定に切り替えるのが損をする」のはなぜか?

日銀は2025年12月に政策金利を0.75%まで引き上げました。
こうした金融政策の影響を受け、多くの銀行では住宅ローンの変動金利の基準金利を4月1日に改定し、実際の返済額は7月の支払い分から変更になる見通しです。

また日銀は2026年の4月、あるいは7月のタイミングで追加利上げを検討していると報じられるなど、金融政策の正常化へのスタンスを崩してはいません。

このように金利が今後も上昇していく可能性が高くなると、リスクを避けるために「固定金利への借り換え」を検討していく人も多くなります。

固定金利は「将来への予測」ですでに上がっている

しかしながら、変動金利の上昇を見てから固定金利へと乗り換えるのは「遅すぎる」というのが正直なところです。

なぜならば、固定金利は「将来の利上げ」を予測して、すでに高止まりの状態だからです。

台風などの自然災害が起きてから「もしものための」ストックを用意しようとしても、すでに価格が高騰していたり、品薄で手に入りづらくなってしまっているのと同じことです。
金融取引でも、事態が急変してから慌てて動くと、かえって「高値掴み」になってしまうのはよくあるのではないでしょうか。

固定金利の基準である長期金利(10年物国債の利回り)は2026年1月に一時2.3%と27年ぶりの高値をつけ、現在も2%前後と高い水準で推移しています。
今後も、元の低水準に戻る要素はなく、米国の金利動向や国内のインフレ状況を睨みながら、「現在の高い水準での推移」または「緩やかな上昇トレンド」が続くと想定されています。

今から高い固定金利に乗り換えるのは、すでに上がりきった相場で長期の固定契約を結ぶようなもので、結果的に損をする可能性が高いのです。

銀行による「借り換えキャンペーン」の実態は?

2026年3月現在、金利が上昇していく中で「変動金利から固定金利」への借り換え需要を見越して、多くの銀行で固定金利(あるいは固定特約付き)への借り換えキャンペーンや借り換え専用の特別金利が実施されています。


※スマートフォンでご覧の方は、表を左右にスクロールしてご確認いただけます。


キャンペーンの傾向 代表的な金融機関 キャンペーン内容 FPの視点(裏側・注意点)
① 現金還元
(キャッシュバック)型
楽天銀行 など 借り換え完了で数万円のキャッシュバック。固定金利への乗り換えを強く促す。 目の前の現金は魅力的ですが、数十万円の諸費用(事務手数料等)と相殺すると実質メリットは薄いケースが多いです。
② 利息キャッシュバック
(抽選)型
SBI新生銀行 など 「〇人に1人、数ヶ月分の金利相当額還元」などの抽選で広く借り換え客を集める。 当たれば大きいですが、外れた場合の「トータルコスト」で冷静にシミュレーションしておく必要があります。
③ 当初の「固定期間」
大幅引き下げ型
地方銀行、JAバンク など 「10年固定」などの金利を期間限定で大幅に引き下げる。特産品のプレゼント等も。 固定期間終了後(11年目以降)の金利引き下げ幅が縮小し、返済額が跳ね上がる「特約終了後の罠」に注意が必要です。
④ 経済圏のセット割
(通信・インフラ連携)
auじぶん銀行、
PayPay銀行 など
スマホ回線や電気料金の契約をセットにすることで、金利をさらに引き下げる。 金利は下がりますが、通信キャリア等を頻繁に変更しづらくなる「縛り」が発生するため、ライフスタイルとの相談になります。

活発なキャンペーン活動の目的の多くは、「囲い込み」と「手数料」です。

銀行にとって住宅ローンは、「貸し倒れ」のリスクが少ない優良な長期債券です。
金利上昇局面では他行へ借り換えられるリスクが高まるため、逃げられないように利用者を囲い込む必要があります。

さらに他行からの借り換えで新しい利用者を獲得できれば、その際に発生する手数料(事務手数料や保証料など)が、銀行にとっては短期的かつ確実な収益となります。

この辺りは携帯電話の長期間契約を前提とした、「乗り換えキャンペーン」や「2年縛り」と似ていますね。

だからこそ、キャンペーンなどの「見出し」の金利に飛びつくのではなく、「諸費用を含めたトータルコスト」や「本当に固定化するメリットはあるのか」を冷静に判断する必要があります。

2:政策金利0.75%時代の「変動→固定への借り換え」は有効なのか?

住宅ローンを「変動から固定へ」借り換えるべきか、「変動金利のまま」で耐えるべきか。
慌てて後悔しないためには、きちんとシミュレーションをして比較することが大切です。

金利差と残債から見る、「借り換え」メリットが出るライン

一般的に、住宅ローンの借り換えでメリットが出るラインは、「金利差1%以上、残債1,000万円以上、残存期間10年以上」が基本だとされています。
それ以下の条件の場合、借り換えによって金利が軽くなる効果よりも、手数料などの負担のほうが大きくなってしまうのです。

さらに今回のテーマのように「変動→固定」への借り換えの場合、わざわざ高い金利へと借り換えることになるため、実際の利払い費は増えてしまうことになります。

「変動→固定」への借り換え:損益分岐点シミュレーション

以下の条件で、返済総額のシミュレーションをしてみましょう。

  • 現在の住宅ローン残高…3,000万円
  • 残りの返済期間…25年
  • 現在の金利…変動金利0.7%

この前提にあたる人が、「年2%の固定金利へと借り換えた場合」と、「変動金利のままで、年1.2%になってしまった(0.5%上昇した)場合」とで比較したグラフがこちらになります。

住宅ローンの支払総額比較シミュレーショングラフ。変動金利(年1.2%)のまま維持した場合と、固定金利(年2%+諸費用)へ乗り換えた場合の25年間の推移。固定金利へ乗り換えた方が最終的な支払総額が高くなることを示しています。
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グラフを見ればわかる通り、変動金利が0.7%から1.2%へと上昇した場合でも、固定(2%)に乗り換えるよりも変動のままで耐えたほうが支払総額は安く済み、400万円以上のお金が手元に残ります。

すでに上昇している固定金利への借り換えは、「将来も金利が変わらない」という安心と引き換えに、高額なコストを抱えることにもなるのです。

同じ金融機関で変動から固定へと切り替えた(「条件変更」といいます)場合には、数千円〜数万円程度(例:5,500円や33,000円など)の手数料を取る銀行が多いようです。
また、他の金融機関で借り換えを行った場合には、諸費用としてさらに80万円ほどのコストが上乗せされることになります。

そうしたコストを差し引いたとしても、わざわざ高い固定金利へと借り換えることによる利払い費の負担が非常に大きいことが比較グラフからは見て取れます。

このように借り換えを検討する場合には、最終的なトータルコストで計算することはマストなのです。

3:変動金利はどこまで上がる?日銀のターミナルレート(金利の到達点)とは

シミュレーションによって、「金利が上がってから慌てて固定に切り替えると、かえって損をする」ケースが多いということは確認できました。
とはいえ、このまま変動金利での返済を続けることに不安を抱く人も多いのでないでしょうか。

  • 変動金利はどこまで上がるのか?
  • この先も2%、3%と金利が上がり続けた場合、家計が耐えきれない。
  • あるいは未払い利息が積み上がり、返済がいつまでも続くのではないか。

しかし結論から言えば、住宅ローンの変動金利が短期間で2~3%へと急激に上がり続ける可能性は考えづらいという見方が市場では有力なようです。

変動金利は日本銀行の政策金利(短期金利)の影響を受けるため、日銀の利上げは住宅ローンの基準金利を引き上げることにつながります。
日銀は昨年2025年12月に0.75%へと利上げを実施し、今後も追加利上げへの観測が報道されています。
しかし、多くの専門家や市場の予測では、日銀の「ターミナルレート(金利の到達点)」は、1.5~1.75%に留まるのではないかとされているのです。

それ以上に金利が急上昇した場合に伴う副作用に、日本の財政・経済が耐えられないというのがその理由です。

いまの日本の財政や経済は、例えるなら「非常に煮崩れしやすい、繊細な食材」です。
日本は世界トップクラスの借金(国債)を抱える国であり、多くの中小企業がギリギリの資金繰りで回し、やっと少し賃上げの機運が見えてきたばかりの段階です。

ここで一気に「金利」という火力を強火にしてしまえばどうなるか。
食材はたちまち跡形もなく煮崩れし、鍋は真っ黒に焦げ付いてしまいます。
その先にあるのは、国の利払い費の増加、企業倒産による不況下の物価高=スタグフレーションです。

日銀が今やろうとしているのは、景気を冷やしすぎず、かといって物価高も抑え込む「絶妙な火入れ」を探る作業に他なりません。
アメリカのようにバーベキューでステーキをガンガン焼くような豪快な調理法は、いまの日本財政や経済には耐えられないのです。

仮に政策金利が1.5%、あるいは1.75%まで到達したとしても、住宅ローンは銀行の優遇割引が適用されることにより、私たちが支払う変動金利はそれ以下に収まるケースが多いのではないかと考えられます。

以上の理由から、日本の財政・経済という「もろくて煮崩れしやすい食材」は、とろ火でじっくりと煮ていく以外の調理法を選ぶのが難しいというのが現状です。

とはいえ、自然災害や海外の情勢悪化など、ある日突然、仕入れ価格が跳ね上がるような「予想外の事態(テールリスク)」は常に存在します。
どうしても強火にせざるを得ない事態が来ないとも限りません。

だからこそ、いつ鍋が吹きこぼれそうになっても慌てないように、手元に「差し水(生活防衛資金)」を用意しておくことが大切です。
手元の資金を貯蓄・運用によって増やし、いざという時に繰り上げ返済ができるように備えておくことは非常に効果的であると言えます。

手元に資金を残して備えるか、高い金利と引き換えに将来への安心を取るか。
どちらを合理的とするかは、人の価値観にもよるところです。
将来の教育費の見込みなど、今後のライフプランニングと照らし合わせて返済計画を練っていくことが重要です。

4:FPが提示する「変動のまま耐えるべき人」の3つの条件

ここまで、「慌てて固定金利に借り換えることのデメリット」、「借り換え時に発生するトータルコスト」、「変動金利のこれからの展望」と、論点を積み重ねてきました。

記事の最後に、FPとして「変動金利のまま耐えるべき人」の具体的な条件を示したいと思います。
以下の3つの条件のいずれか、あるいは複数に該当するご家庭であれば、変動金利のまま返済を続けていて問題ないのではと考えられます。

  • 十分な「生活防衛資金」が確保できている…最も重要なのは、家計に「生活防衛資金」という貯蓄によるバッファ(緩衝材)があるかどうか。飲食店の開業を目指す人が、開業資金だけでなく、仕入れの高騰や客足の減少に耐えるための「運転資金」を確保するように、家計にも「何かあった時」のための資金が必要になります。一般的には生活費の半年~1年分が合格ラインです。
  • 住宅ローンの残債・残期間が少ない…ローンの利息は、元本の残高にかかります。すでに返済がかなり進んでいる状態で、ローンの残高が少なく(目安として1,000万円以下)、あるいは返済期間が残り短い(こちらも目安として10年未満)場合、金利が上昇したとしても影響をそれほど大きくは受けません。借り換えによって新たなコストを抱え込むよりは、見えているゴールに向かって「逃げ切り・完走」を目指すほうが賢明です。
  • 毎月の返済額が上がっても家計が黒字…まずはご家庭の家計簿、毎月の収支を見直してみましょう。返済額が上がったとしても、毎月のキャッシュフローがしっかり黒字をキープしているのであれば、変動金利のままで問題ありません。

もし「どれにも当てはまらず、このままでは家計が厳しい」という場合は、まずは借入先の銀行へ条件変更の相談に行くか、保険や通信費など大きな固定費の削減から手をつける必要があります。
また住宅ローンを提供する多くの銀行では、「5年ルール(金利が変わっても5年間は毎月の返済額が変わらない)」、「125%ルール(返済額の変動は、これまでの1.25倍を上限とする)」が採用されています。
(※一部のネット銀行など適用外のケースもあるため、ご自身の契約内容の確認は必要です)

来月からいきなり返済額が2倍になるような事態にはなりません。
しかし当面のキャッシュフローが変わらない代わりに、水面下ではローン元金の減りが遅くなります。
金利上昇が続けば、いずれ本来支払うべき利息が毎月の返済額を上回る「未払利息」が発生するリスクもゼロではありません。

前述した通り、余裕のある月に「繰り上げ返済」を実施して元金を直接減らせるよう、家計管理による手元資金の確保が重要になってくるのです。

金利の変動に一喜一憂する前に、スマホの通信費や不要なサブスクなど、固定費を見直した方が家計にとっては有益です。
仮に月に1万円でも浮かすことができれば、金利の上昇分はしっかり吸収できるはずです。

まとめ:金利はコントロールできないが、家計はコントロールすることができる

日々の天候によって野菜や魚の仕入れ値が上がるように、金融市場の金利も私たちがコントロールすることはできません。
しかし自分の家計に関しては、自ら管理し、行動することで変えることが可能です。

金利の変動に対するモヤモヤとした不安に有効な特効薬は、「具体的な数字を把握すること」と「いざという時の備えを持つこと」の2点です。
不安解消のためのロードマップを以下に示して、この記事の結びとします。

  1. 住宅ローンの「返済予定表」を手元に出す…現在の「ローン残高」と「残りの返済期間」、そして「現在の適用金利」がいくらになっているか、正確な数字を確認しましょう。
  2. 通帳や家計簿を開き「生活防衛資金」を計算する…すぐに動かせる現金(預貯金)がいくらあるかを確認し、毎月の生活費の半年〜1年分(約150万〜300万円)が確保できているかチェックしましょう。もし足りなければ、まずはスマホ代などの「固定費の見直し」からスタートです。

またこれからマイホームの購入を検討している人にとっては、今後も金利が上昇していくことを前提に余裕のある返済計画を立て、変動・固定それぞれのメリットとデメリットを比較することが大切です。

ローンの返済計画を含めた人生設計、そしてそのための資産形成は、日々の家計が黒字であることが極めて重要な前提となっています。
家計がきちんと管理され、体力のあるものならば、金利のニュースに一喜一憂する必要はもうありません。

「金利のある世界」をサバイブするための家計づくり、資産づくりを、今日から始めてみませんか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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