板前FP雑記帳

板前として「働くFP」からの、普通の暮らしを守るためのいくつかのヒント。

あなたのNISAが「溶ける」とき。積立投資、下落相場とどう向き合うか

厨房でカレーの寸胴鍋をかき混ぜながら、NISAや積立投資、生活防衛資金のリスク管理メモを確認する現役板前FPの後ろ姿
©板前FP雑記帳

「せっかく始めたNISAが溶けていく・・・」

このところの金融市場では株価は乱高下を繰り返し、日経平均や人気の「オルカン」も不安定な値動きを続けています。

休憩時間にスマホで評価損益を目にして不安になり、居ても立っても居られず慌てて売りに出す。
相場の荒れ模様を目にして、これまで積み立ててきたNISAを「損切り」してしまおうとする人は少なからずいて、相談を受けることが多くなってきました。

「将来のために」と積み立てを始めた資産が目減りしていくのを見れば、誰でも慌てるものです。

しかしその一方で、地政学リスクによって株式市場が乱高下することは歴史的に何度も繰り返されてきたことでもあります。
そして往々にして、狼狽して売りに出した結果、後悔することになるケースも多いのです。

短気は損気とも言います。
まかないでカレーを作っている厨房から、世界の金融市場に目を向ければ、資産が「溶けてから」が勝負の始まりという見方もできます。

そして何より、将来の市場の「成長」の恩恵を受けるのに最も重要なことは、鍋の火を絶やさないこと、つまり市場に留まり続けることなのです。
今回は突発的なリスクにもうろたえずに済む、長期投資の心構えについて書いていこうと思います。

下落相場は「仕込み」の時期…「溶ける」と慌てず、「溶かして」旨味をだせ

カレーは身近でありながら、奥が深い食べ物です。

発祥の地であるインドのようなスパイス重視のもの、タイのココナッツミルク系など、その土地ごとの文化や食材と溶け合い進化を遂げた結果として、世界中に多彩なバリエーションのカレーが存在しています。

実に様々ですが、個人的に一番好きなものは欧風カレーです。
あめ色になるまで炒めた香味野菜とペーストにした果実の甘みと酸味が重なって生まれるコク、深みのあるフォンドボー、甘く感じるひと口目の後から、スパイスの刺激が追いかけてきます。

「欧風」の名を冠しながらも実は日本発祥のもの。
不思議なもので、好きだからこそ「まかないで本格的な欧風カレーを」という気には、あまりなりません
片手間で作ろうとして良いものじゃない、という気持ちがあるんでしょうね。

じゃがいもや人参がゴロゴロした家庭的なカレーには、どこはホッとできるような良さがありますが、まったく別の料理です。
肉を焼き固めたフライパンで赤ワインを煮詰めるデグラッセ。
香味野菜を弱火で1時間以上キャラメリゼするソフリット。
欧風カレーでは、様々な素材が元の形をとどめることなく旨味として溶けだし、スパイスと重なり合うのです。

ですから、少しこじつけのようになってしまいますが、地道にコツコツ積み立ててきたNISAの評価額が溶けていくのを目にしても、慌てて「狼狽売り」に出すことは賢明とは言えません。
株価が暴落すれば、株式を投資対象にしている投資信託の評価額も当然大きく下がります。
これを違う視点で見れば、相場の下落時は同じ掛け金でより多くの口数を買える「仕込み」の時期でもあるのです。

資産が溶けているのではなく、うまみを引き出すために割安で買った大量の食材を煮込んでいるのだと考えてみてください。
下落相場の仕込みの時期に、鍋の火を絶やさず市場に留まることができれば、将来市場が回復したときにリターンとなって返ってくる可能性が高いのです。

「ドルコスト平均法」と「一晩寝かせたカレー」…熟成によって増すコク(リターン)

カレー作った翌日、一晩寝かせたカレーが美味しくなっていることに驚いた経験は、多くの人に共感してもらえると思います。

出来立てのカレーに漂うスパイスの香りと刺激も良いものですが、時間をおいて休ませることで、具材から溶け出した旨味とスパイスが鍋の中で均一になじみ、角の取れたまろやかな深みのあるコクへと変化していくのです。

投資の世界において、「毎月〇万円」のように一定の金額を定期的に購入し続ける投資手法をドルコスト平均法といいます。

"NISAと書かれた寸胴鍋で煮込まれるカレーと、ドルコスト平均法の4つのメリット(感情の排除、安値仕込み、高値掴み防止、長期的な熟成)を解説した黒板の図解イラスト"
©板前FP雑記帳

価格が高い時には少なく、安い時には多くの口数を自動的に購入できるため、購入金額の平均をならして安定(平準化)させることができます。
また、相場が乱高下していても、常に決まったルールで購入を続けるため、「売り時・買い時」の判断で迷う必要もありません。
暴落時に慌てて売り、高騰時に乗り遅れまいと焦って高値で買ってしまうようなリスクを避けることもできます。

カレー作りも、出来上がりを焦って火を強くしてしまったりすれば、かえって味を損ねる原因にもなります。
料理でも投資でも、「寝かせる=時間をかけて育てる・成分を安定させる」というプロセスには意味があるのです。



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積立投資のリスク管理…似ているようで違う、「寝かせること」と「放置」

それでは「ほったらかし」で良いのか、といえばそうでもありません。

出来上がったカレーを翌日までそのままにしておけば、ウェルシュ菌による食中毒の原因となることは、現在では広く知られています。
常温で放置することは避け、出来上がった鍋を氷水につけ、中身をかき混ぜながら熱を逃がして急冷することが重要です。
冷めた後は冷蔵庫で保管し、食べる際にはしっかり再加熱します。

カレー作りの温度管理と同様に、積立投資にもリスク管理は必要です。

まずは、「生活防衛資金」をきちんと準備しておくこと。
いくらドルコスト平均法が優れていても、もしこの下落相場の最中に急な病気や失業などで現金が必要になれば、一番価値が下がっている状態で資産を売却しなければなりません。
投資における正しい温度管理とは、いざという時のための現金(目安として、会社員であれば毎月の生活費の3〜6ヶ月分程度)を安全な場所に確保した上で、NISAという鍋の中の資産をじっくり熟成させることなのです。

また、自分がどのくらいならリスクを許容できるかを見極め、その範囲内で無理なく投資を続けていくことも重要です。
どんなに美味しいカレーでも、食べ過ぎればお腹を壊しますし、鍋のサイズが合わなければこぼれてしまいます。

最近、テレビの情報番組などでも「NISA貧乏」という言葉を耳にする機会が増えました。
将来の備えを焦るあまり、生活費を極端に切り詰めてまで毎月の積立額を増やし、日々の生活が苦しくなってしまっては本末転倒です。

将来のための積立投資は、家計管理によって生まれた黒字(余剰資金)で行うのが鉄則です。
人によって、心地よく投資に回せる金額、リスクの許容度は全く異なります。

「これくらい株価が下がっても、夜ぐっすり眠れるか?」
「今の積立額は、日々の生活の豊かさを犠牲にしていないか?」
まずは自分の日々の生活と向き合うことが大切ではないでしょうか。

まとめ…NISAという鍋の火を絶やさないために

バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍・・・、私たちの世界はこれまでにも様々な危機に直面してきました。

その影響はエネルギー価格の高騰や金融市場の不安定化にとどまらず、日用品や医療器具の原材料の枯渇やサプライチェーンの混乱など、国民生活に大きな影響をもたらします。
それゆえに、市場の乱高下を「やがて収まる波」とタカをくくり、何の備えもなく乗り切ろうとするのは早計です。

しかしだからといって慌てて逃げ出したり、焦って高値づかみをしてしまえば、これまでの地道な努力が水の泡に。
金融相場が不安定になった時に、NISAという「鍋の火」を絶やすことなく、市場に留まるために必要なポイントは以下の通りだと筆者は考えます。

  • レシピを守ること…ドルコスト平均法による積立投資
  • 食中毒を防ぐための温度管理…生活防衛資金という備えを持つこと
  • 自分に見合った量と鍋のサイズ…リスクへの許容度を見極めること

「時間」は時として最良の調味料にも、食材をダメにする毒にもなります。
大切なのは正しいレシピと火加減を守り、時間を味方につけること。
そうして出来上がったあなたの資産は、10年後、20年後に必ず、あなた自身を温め、助けてくれる「極上の一皿」に仕上がっているはずです。
そのために必要なことは、今日や明日の株価に一喜一憂することではありません。

あなたが今抱えている「不安」は、資産を守るための「気づき」のサインでもあります。
まずはいざというときの備えづくり、そのための家計管理から始めてみましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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