板前FP雑記帳

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私的年金のポータビリティ

転職・退職時に要注意!私的年金の「ポータビリティ」とは?

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前回のブログ記事では、iDeCo(個人型確定拠出年金)について解説しました。

私的年金や企業年金は、老後の生活原資となる資金を積み立て、自ら年金の「2階部分・3階部分」を築くための重要な制度です。

 

では、企業年金やiDeCoで資産を運用していた人が転職したり退職したりした場合、それまで積み立てた資産はどうなるのでしょうか?

結論から言うと、転職先の実施している企業年金やiDeCoに資産を持ち運んで「移換(いかん)」することができます。

この制度を「私的年金のポータビリティ」と呼びます。

老後の資産形成を途切れさせず、継続性を担保するために欠かせない仕組みです。

 

まずは、主な企業年金・私的年金について簡単におさらいしておきましょう。

  • 確定給付企業年金(DB):会社が将来の年金額を約束し、掛け金も会社が負担・運用する制度。
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC):会社が掛け金を出し、従業員自身が運用する制度。運用成績で将来の受取額が変わる。
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo):自分自身で掛け金を出し、自ら運用する制度。

一目でわかる!私的年金の移換ルート早見表

どこからどこへ移換できるのか、複雑な組み合わせを一覧表にまとめました。

※表は左右にスクロールできます ↔️

移換元\ 移換先 確定給付企業年金
(DB)
企業型確定拠出年金
(企業型DC)
個人型確定拠出年金
(iDeCo)
確定給付企業年金(DB)
※規約がある場合

※資格喪失から1年以内

※資格喪失から1年以内
企業型DC
※規約がある場合

※6ヶ月以内に手続き必須!
iDeCo
※規約がある場合
-

※移換先の企業年金に「受け入れの規約」があるかどうかの事前確認が必要です。

パターン別・移換手続きのポイント

それでは、私的年金を他の年金制度へと移換するケースについて、1つずつ見ていきましょう。

確定給付企業年金(DB)からの移換

  • DB → DB:転職先の確定給付企業年金に、移換を受け入れる規約がある場合は可能です。
  • DB → 企業型DC:退職するDBの担当者(人事部や企業年金基金)に申し出て、脱退一時金を企業型DCへと移換します。(※資格喪失日から1年以内)
  • DB → iDeCo:同じく退職するDBの担当者に申し出て、脱退一時金をiDeCoへと移換します。「厚生年金基金・確定給付企業年金移換申出書」を提出します。(※資格喪失日から1年以内)

企業型DCからの移換

  • 企業型DC → DB:転職先の確定給付企業年金に、受け入れ規約がある場合のみ可能です。
  • 企業型DC → 企業型DC:転職先も企業型DCを実施している場合、資産を移換できます。「個人別管理資産移管依頼書」を提出します。※それまでの資産は一旦現金化され、転職先の商品へ自動配分されるため、自分の意思にそぐわない場合は「スイッチング(買い替え)」が必要です。
  • 企業型DC → iDeCo:転職先に企業型DCがない場合や、自営業・専業主婦(主夫)になる場合は、iDeCoへ移換して運用を継続します。

iDeCoの資産を他の私的年金へ

  • iDeCo → DB:転職先にDBがあり、「iDeCoからの移換を受け入れる」規約があれば移換できる場合があります。
  • iDeCo → 企業型DC:勤務先が企業型DCを導入した、あるいは企業型DCのある会社へ転職した場合に移換します。※iDeCoを管理していた金融機関で資格喪失手続きを行い、その後会社側で移換手続きを行います。

※会社によっては企業型DCとiDeCoの併用を認めている場合もあります(上限金額やマッチング拠出を利用していないことなど条件あり)。事前に登録事業所の変更手続き等をご確認ください。

⚠️絶対放置NG!企業型DC「自動移換」の恐ろしいペナルティ

企業型DCでは、退職すると加入資格を失います

ここで最も注意すべきなのが、加入資格を失った翌月から起算して「6ヶ月以内」に、移換手続きをしなければならないという点です。

この手続きを怠ると、それまで積み立てた資産は自動で現金化され、国民年金基金連合会へと移換されてしまいます。これを「自動移換」と呼びますが、以下のような大きなデメリット(ペナルティ)が発生します。

  • 運用がストップする:現金化されるため運用指図ができず、そのままでは60歳になっても引き出せません。
  • 期間がノーカウントに:自動移換されていた期間は、確定拠出年金の「通算加入期間」としてカウントされないため、受け取り開始が60歳よりも遅くなる可能性があります。
  • 無駄な手数料が引かれ続ける:
    • 自動移換された時の手数料:4,348円
    • 自動移換から4ヶ月後以降の管理手数料:毎月52円
    • 改めて企業型DCに移換する際の手数料:1,100円(iDeCoに移換する場合は3,929円)

このように、本来は負う必要のない手数料が引かれ続け、大切な資産が目減りしてしまいます。

まとめ:退職時の年金手続きは鮮度が命!速やかに対応を

食材の鮮度が落ちると味が落ちるように、年金の手続きも放置して「鮮度」が落ちると、手数料という形で大切な資産の身が細ってしまいます。

特に企業型DCからの移換は「6ヶ月以内」という期限があります。退職や転職の際は、さまざまな手続きで忙しいとは思いますが、年金の移換手続きも速やかに行うことを強くお勧めします。

今回は私的年金のポータビリティについて解説させて頂きました。少しでも参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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