板前FP雑記帳

板前として「働くFP」からの、普通の暮らしを守るためのいくつかのヒント。

砥石を研ぐための砥石があるという話と、貯蓄・資産形成のための家計の見直しについて。

包丁は仕事終わりに研ぐもの、とよく言われます。
なぜ仕事終わりなのかと言えば、研いだ直後の金属臭を食材に移さないためとか、仕事に対する姿勢だとか、いくつか理由があると思います。

道具を手入れする、きれいに使う。
当たり前のことかもしれませんが、この当たり前のことを当たり前に、というのはとても難しいものです。
実際の調理場では、切れないままの包丁で仕事をしている人はたくさんいます。

自分の職場のような居酒屋だと、仕事終わりもバタバタすることが多いのでなおさらです。
片づけやら翌日のための発注やら割とやることも多いし、みんな長い時間立ちっぱなしで働いているので、早く帰れるものなら帰りたい。

なので自分はきちんと仕事終わりに、というよりは一日の仕事の段取りがついたタイミングで研ぐ、という感じです。
タイミングにこだわりすぎて精神的な負担になったり継続できなくなったりしては意味がありません。

そして包丁を研ぐにも、必要な準備があります。
それは包丁を研ぐための砥石を研ぐこと。
「面直し」という砥石を研ぐための砥石があって、これで手入れすることで、包丁を研ぐ面をきちんと平らにすることができるんです。

お店によってはスタッフの共有用の砥石が、滑り台というか、スキーのジャンプ台のようになっているものがありますが、そんな砥石を使って包丁の刃を丸刃にしてしまっては本末転倒です。

道具の手入れ。そして道具を手入れするための道具の手入れ。
こうして書くととても面倒に感じてしまいそうですが、こういう手入れは日々こまめにやっておくのが一番楽です。
切れなくなった包丁、刃こぼれや丸刃になった包丁を研ぐの、本当に大変ですから。
すし職人の手と、濡れた砥石。「面直し砥石」で砥石の手入れをしている。
これは家計管理も同様だと思います。
貯金をしたい、資産形成を始めたいと思いながらなかなか実行に移せない人というのは、そもそもの家計管理への意識が低い・面倒だと感じているケースが多いのではと思います。

当たり前の話ですが、家計を黒字にしない限りは貯蓄はできません。
砥石の面を平らにしておかないと包丁が研げないのと同じです。
今回の記事では、スマホ一つでできる「家計のお手入れ」をご紹介します。

1:使っていないサブスクの見直し

サブスク(サブスクリプション・定額課金)は料金を支払えば一定期間サービスを楽しめるという便利なサービスで、対象は音楽や映像の配信サービスから食材等の定期購入など実に様々。
すでに私たちの生活に広く定着した感があります。

家計管理において「使っていないサブスクの見直し」は割と定番のテーマですが、頭ではわかっていてもなかなか難しいもの。
「近いうちにまた使うかも」「解約手続きが面倒」という心理から、つい後回しにしてしまいがちです。

これは実に人間らしい心理であり、行動でもあるんです。
人間を含む多くの生き物には、変化に伴うリスクを回避するため、慣れ親しんだ現状を選好するという傾向があります。
現状維持バイアスというやつですね。

人間はもともとそういうもの、そしていつもいつも正しい選択なんてできません。
「解約したばかりなのにまた使うことになった」
「いつか使うと思って使わないままずるずると料金を支払っている」
なんていうのも、誰にでもあることです。

サブスク見直しの3か月ルール

なのでここでは、あくまで家計管理のために見直しの目安となる期間を決めておくことをお勧めします。
板前FPの個人的なお勧めは3か月(ワンクール)です。これには以下のような理由があります。

  • 3か月(ワンクール)たっても手を付けなかったということは、あなたの今の生活サイクルの中に「それが入り込む隙間がない」という証明です。
  • 「忙しい」のが使わなかった理由の場合、3か月間忙しかった人は、次の3か月も何らかの理由で忙しいものです。
  • 音楽や映像作品、あるいは通信教育やジムの会員費でも、興味・やる気といった自分の気持ちの「鮮度」が重要です。しばらく出番がなさそうなら、いったん「冷凍(解約)」してしまいましょう。出番が来た時に「解凍(再契約)」すればいいのです。

実際の手順はこのようになります

  1. 現状把握:クレジットカードの明細や銀行口座の引き落としの履歴、Google/Appleの管理画面で確認する。
  2. 利用頻度と目的の確認:ほとんど使っていないものはもちろん、継続する明確な理由がないものは解約を検討する。
  3. 継続するプランも最適化できるかを検討:容量やプランをダウングレードできないかを検討する。また解約手続きが複雑でないかを事前にチェックする。
  4. 見直しの習慣化:見直しの目安となる期間(3か月など)を決め、カレンダーアプリなどでリマインダーを設定する。

2:通信費と保険料の最適化

ここも割と定番のテーマですが、契約時のプランをなんとなくそのままにしているというケースが多く、見直しによって月数千円の費用が浮くというケースも多いものです。
スマホでも生命保険でも、契約と自分の利用状況が適正なものなのかぜひ見直してみましょう。

スマホの使用ギガ数と適正価格、プラン見直しのポイント

それではスマホの契約を見直すにあたって適正価格を見ていきましょう。
スマホの使用ギガと価格の目安(※価格は概算です)】

使用ギガ数大手キャリアオンライン専用プラン/サブブランド格安SIM
~3GB(家にWi-Fiがある・ほとんどネットを利用しない)4,000~5,000円1,000~2,000円800~1,100円
~20GB(そこそこ動画も見る)5,000~7,000円2,500~3,000円1,000~2,500円
無制限プラン(ヘビーユーザー)7,000~8,000円---3,278円(楽天モバイル)

  • 「〜20GB」の範囲について: 大手キャリアではこの容量帯の専用プランが少なく、多くが無制限プランに自動的に移行するかたちになります。オンライン専用プランや格安SIMで最も競争力のある価格帯です。
  • 「無制限プラン」について: 大手キャリアの料金は高めですが、楽天モバイルはデータ使用量に応じて料金が変動する段階制を採用しており、データ無制限(3,278円)でも比較的安価です。
  • 実際の請求額: 上記はあくまで「基本料金」の目安です。ここに通話料、オプション料、事務手数料などが加算されます。また、家族割引や光回線とのセット割引を適用すると、大手キャリアの料金はさらに安くなります。

プランの選び方

  • 自分の平均使用量を確認する: 毎月自分が何GB使っているかを、各キャリアのマイページやアプリで確認してください。これが最も重要な情報です。
  • 必要なデータ量より少し多めのプランを選ぶ: 毎月ギリギリのプランではなく、少し余裕を持ったプランを選ぶと安心です。
  • 通話時間も考慮する: 5分かけ放題などのオプションが必要かも検討しましょう。

生命保険の最適化

リスクに備えるための大切な保険ですが、人生におけるリスクは常に固定されておらず、ライフステージが変わるたびに見直しが必要になります。
また医療保険などは公的保障を考慮して支給額等を決めると無駄がなくなります。

ライフステージの変化と死亡保障

  • 独身時代:医療保険と、もしものための死亡保険(最低限)で十分。
  • 結婚・住宅購入:死亡保障は増額。住宅ローンに「団体信用生命保険(団信)」が付いていれば、その分の死亡保障は不要になります(これが最も大きな見直しポイントです)。
  • 子供の誕生:最も死亡保障(残された家族の生活費)が手厚く必要な時期です。国の制度である遺族年金の支給額も確認しましょう。
  • 子供の独立:死亡保障は減額してOK。自身の老後に向けた医療・がん保険を重点的に。

公的保障と医療保険

  • 入院・手術:高額療養費制度(自己負担上限あり)があるため、数億円の医療保険は不要です。
  • 病気・ケガで働けない時:社会保険に加入している場合、業務中や通勤中のけがや病気であれば労災保険、それ以外の業務外・日常生活での場合は健康保険による傷病手当金(給与の約2/3)の支給があります。
  • 重度の障害が残った場合:就業補償保険などで備えますが、その際にも国の制度である障害年金の支給額を確認しましょう。

生命保険に貯蓄性は必要か?
生命保険には「掛け捨て型」と「貯蓄型」があります。
掛け捨て型は支払った保険料が戻ってこないタイプで、貯蓄型は満期保険金や解約返戻金が支払われます。

一見すると貯蓄型のほうが損をしないで済むように思われますが、その分保険料も高くなります。
「もしものための保障」と「将来のための貯蓄」は分けたほうが家計の無駄がなくなります。

  • 保険料:掛け捨てで安く済ませる。
  • 貯蓄や資産形成:NISAやiDeCo等の非課税制度で効率よく進める。

3:お金の出入りを可視化する

最後は現状把握について。
あちこちの銀行に口座が分散していたり、クレジットカードを何枚も使い分けていたりしていませんか?
生活にお得なポイントもいろいろあって、管理は大変です。

歪んだ砥石や包丁の刃こぼれを自力で直すのは大変ですが、家計管理には便利なアプリがあります。これを使わない手はありません。

初めての方には、資産全体が見渡しやすい「Money Forward ME」がおすすめです。投資(NISA)の管理も得意なので、資産形成の強い味方になります。
「銀行口座やカードがたくさんあって、無料版の4件制限だと足りない!」 という方には、連携数が無制限の「Zaim」が良いでしょう。

家計管理アプリ比較

1. Money Forward ME(マネーフォワード ME)
「資産全体を俯瞰したいならコレ」

メリット: 銀行、クレカだけでなく、証券口座(NISA・iDeCo)やポイントとの連携が最強です。「家計簿」というより「資産管理ツール」としての側面が強く、今回のブログのテーマである「貯金体質(資産形成)」と最も相性が良いです。

デメリット: 無料版だと連携できる金融機関が「4件」までに制限されています。

2. Zaim(ザイム)
「無料で使い倒すならコレ」

メリット: 最大の強みは、**無料版でも「連携数が無制限」**であること。口座やカードがたくさんある人には救世主です。また、レシート読み取り機能の精度が高く、スーパーでの買い物(食費)管理に向いています。

デメリット: 資産推移のグラフなど、投資系の機能はMoney Forwardに一歩譲ります。

3. Moneytree(マネーツリー)
「シンプルに『残高』だけ知りたいならコレ」

メリット: 画面が非常にシンプルで、広告がほとんど出ません。「ポイントの有効期限」や「カードの引き落とし日」を通知してくれる機能が優秀です。

デメリット: レシート撮影機能がありません(自動連携特化)。手入力で現金を管理したい人には不向きです。

まとめ:砥石は平らに、家計は黒字に。

冒頭、包丁研ぎと砥石の面直しの話をしました。

貯蓄・資産形成のためには、きちんと包丁を研いで家計を黒字にしなければなりません。
家計を黒字にするためには、歪んだ砥石を平らにするように、家計の無駄をそぎ落としてお金の流れをスムーズにする必要があります。

節約は、我慢ではありません。
無駄なものにお金を使わないということは、本当に必要なものや欲しいものに使えるお金が増えるということ。
包丁が切れると気持ちよく仕事ができるように、自由に使えるお金や貯えが少し増えるだけでも、生活が豊かになったと感じることができます。

この機会にぜひ、家計という砥石を整えてみましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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