板前FP雑記帳

板前として「働くFP」からの、普通の暮らしを守るためのいくつかのヒント。

リボの借入残高があるならNISAは待つべき。「年利15%」に勝つための、資産形成の“段取り”について

あなたは今、リボ払いの返済を抱えながら、新NISAで積立投資を始めていませんか?
将来のために資産形成を始めようという、あなたのその前向きな行動力は素晴らしいものです

ですがその一方で、FPとしては少し厳しいことを言わなくてはなりません。
今はスマホを置いて、NISAの積立設定を解除することをお勧めします。

あなたが将来のために「年利5%」の投資リターンを追うその裏で、「年利15%」というリボ手数料があなたの資産を食いつぶしているのです。
一生懸命、穴の開いた鍋に水を貯めようとしているようなもの。
まずは水を止めて、穴を防ぐべきです。

この記事は、あなたに投資を諦めさせるためのものではありません。
むしろここに書かれているのは、あなたが将来投資で資産を作るための大切な「段取り」、FPとしての戦略的アドバイスです。

  • なぜ、投資と返済の「同時進行」ではダメなのか?
  • なぜ、「完済」こそが最強の投資になり得るのか?

その理由を数字で確認してみてください。
遠回りのように見えて、実はそれが資産形成の最短ルートであることが分かっていただけると思います。
きっと、水を止める勇気が持てるはずです。



比較シミュレーション:「返済しながら積立投資」VS「完済してから積立投資」

ここではリボ払いユーザーが資産を作っていくためのパターンを2つ用意しました。
ひとつは返済しながらコツコツ積立投資をしていくパターンと、もうひとつはきっちり完済してから積立投資に取り組むパターン。
はたしてどちらが、より多くのお金を残せるでしょうか?

前提条件
・リボ払い借入残高:50万円(年利15.0%)
・積立投資の想定リターン:年利5.0%
・毎月の資金(返済+投資):2万円
・期間:「同時進行プラン」で完済するまでの期間

パターンA
・返済:毎月1万円(元利均等)
・投資:毎月1万円

パターンB
・フェーズ①:月2万円を返済に充てる(元利均等)
・フェーズ②:完済後、月2万円を全額投資

シミュレーションの結果は以下のグラフの通り。積立投資を中断してリボの返済に回したほうがより多くの資産を残すことができます。

借金返済方法の違いによる最終的な総資産額の比較グラフ。パターンAは932,959円、パターンBは1,080,637円で、パターンBの方が約148,000円多い結果となっている。
©板前FP雑記帳

パターンAとパターンBの最終的な資産残高の差は約14万8千円。
毎月の資金が2万円ですから、実に1年以上の差が出るのです。

なぜここまで差がついたのか、詳細を見ていきましょう。


Hint
表は横にスクロールしてご覧いただけます →


項目 パターンA:同時進行 パターンB:完済優先 差額 (B - A)
借金完済までの期間 79ヶ月 31ヶ月 48ヶ月短縮
支払った利息の総額 289,554円 103,243円 +186,311円
(節約)
投資積立元本 790,000円 976,757円 +186,757円
最終純資産 932,959円 1,080,637円 +147,678円
ここで注目すべきなのは、「支払った利息の総額」で実に18万円以上の差がついています。
パターンAでは先に積み立て投資を始めている分だけスタートダッシュのアドバンテージがあるはずですが、利払い費の総額にこれだけの差があるとさすがにカバーすることはできず、最終的な資産残高においても明暗を分ける結果となったのです。

なぜ「投資」より「返済」なのか? 「年利15%」の重み

パターンAのようにリボ払いの返済を毎月1万円支払ったとしても、借金が1万円減るわけではありません。
毎月の支払額のうち、元金の返済に充てられるのは、手数料(利息)を支払った後の残り僅かな金額です。

例えば初月の支払いの場合、年利15%・借金50万円のリボ払いの返済では、50万円の元金に対して月利1.25%の利息(年利15%÷12)がかかります。

  • 500,000円×1.25%=6,250円(毎月の利払い費)

つまり毎月の1万円の支払額のうち、元金の返済に充てられる金額はわずか3,750円にしかなりません。
単利とはいえ、年利15%です。
大きな力が、借金の元本を増やそうとかかり続けます。

パターンAを選んだ場合、あなたエスカレーターを逆走するようなペースでしか前に進むことはできません。
こうしたリボの金利が持つ負の圧力に対して、「年5%の不確実な利益」である投資の運用益で抗うのは無謀であると言えます。

最悪なのは、投資のための資金を確保するために、リボの毎月の返済額を最小限に設定すること。
「穴の開いた鍋」どころか、お金をみすみすドブに捨てているようなものです。
金利の高い借金に立ちむかうには、地道に、そしてできるだけ早く元本を減らしていくのがいちばんの近道なのです。

借金の利息は、元本にかかるもの。
元本を減らせば、その元本にかかるはずだった利息も消滅します。
パターンAとパターンB、両者の明暗を分けたのは、利息のために支払った金額の違いだったのです。

支払った利息の総額の比較グラフ。パターンAの289,554円に対し、パターンBは103,243円と大幅に安くなっており、赤い矢印で「18万円以上の差!」と強調されています。
©板前FP雑記帳

「リボ地獄」から「勝ち組」へのロードマップ

こうして具体的な数値を用いて比較しても、「リボの返済こそ最良の投資」という事実を飲み込むのは、なかなか難しいかもしれません。

SNSやブログで「新NISAで○○万円達成!」などと、投資の成果を競うよう喧伝した報告があふれる昨今、投資を捨てて返済に資金を回すのは自分だけがレースから脱落して取り残されているように感じることでしょう。

しかし、焦りは禁物です。
そもそも積立投資は、長い時間をかけて資産を育てていくもの。
今日明日の成果に、一喜一憂するものではありません。

さらに言えば、あなたには資産を評価するための、「大切な視点」が欠けています。
それは、バランスシート(B/S)です。

家計のB/S(バランスシート)を天秤で表現したイラスト。左側の「資産」には家・車・現金・投資、右側の「負債」には住宅ローンやクレジットカード、「純資産」には資産の正味部分が描かれている。
©板前FP雑記帳

これを飲食店で例えるなら、「売上(資産)」と「利益(純資産)」の違いです。
いくら店に行列ができて売上が上がっても(=NISAの残高が増えても)、原価率が高すぎて赤字(=リボ残高があり金利を払っている)なら、その店はいずれ立ち行かなくなります。
重要なのは、見た目の売上ではなく、手元に残る「利益(純資産)」なのです。

①マインドセット:「リボ返済」はバフェットに続く道

ここでは、「積立投資の資産残高ーリボの借入残高=純資産」というシンプルな視点で、もう一度シミュレーション結果を見てみましょう。

今回のシミュレーション

  • パターンA:リボの返済と積立投資を同時進行
  • パターンB:先にリボを完済してから積立投資
借金返済方法の違いによる純資産残高の推移比較グラフ。パターンBの方がパターンAよりも早く資産がプラスに転じ、最終的な残高も多くなっている様子。
©板前FP雑記帳

実はパターンB、つまりリボに資金を優先して充てるほうが、最初の一歩目から優位に立っているのです。
最初のほうこそ微々たるものですが、時間の経過と共に両者の差は決定的なものになります。

考えてみれば、当然のことです。
積立投資の想定リターン(年利5%)は、約束されたものではありません。
それに対してリボ払いの返済は、年利15%の借入残高を確実に減らすことができるのです。

年利15%が確実に保証されている投資商品は、詐欺以外には存在しません。
株式投資の神様ウォーレン・バフェットですら年平均20%程度です。
リボ払いの返済は、あの投資の神様に肉薄するパフォーマンスが約束された道なのです。

あなたはこれでもまだ、効率の悪い「同時進行」を選びますか?

②実行プラン:「生活防衛費」を確保し前進を

ここまでの話で、まじめな人ほど「今すぐ完済したい」と熱くなってしまうかもしれません。
ですが、少し落ち着いて。
何事にも段取りがあります。

急な病気、冠婚葬祭、家電の故障……生きていれば予想外の出費は必ずあります。
その時に手元に現金がなく、またクレジットカードを切ってしまっては、元の木阿弥です。
せっかく希望をもって走り出したのに、そのとたんに挫折してしまっては、今度こそ立ち直れないかもしれません。

そうならないためには、まず「生活防衛費」を確保する必要があります。

それでは具体的にいくら貯めればよいのか?
教科書的なFPのセオリーでは、標準的な生活防衛費は「生活費の3~6ヶ月分」と言われています。
ですが年利15%の火車に乗っているあなたに、そんな悠長な時間はありません。

なのでここでは、20万円を一つの目安にすることをお勧めします。
これは、お店のレジに入れておく「釣り銭準備金」のようなものです。
店を開ける時、釣り銭用に何百万もレジに入れる人はいません。
必要最低限の釣り銭(防衛費)があれば、あとの売上はすべて金庫(返済)にしまうのが普通です。

金額は多少前後してもかまいません。
先ほど挙げたような急な出費、そして賃貸マンションや車検の更新などの出費イベントに耐えられる金額が、あなたの「生活防衛費」です。

生活防衛費は、あなたの背中を守ってくれる頼れる相棒です。
後顧の憂いを絶ったのち、あとは自信を持って、全力で返済という名の「最良の投資」に資金を注ぎ込んでください。

最後に

ここまでFPとして、悩んでいるあなたに少し厳しいことを言ったかもしれません。
ですが私はFPであると同時に、あなたと同じように将来に対して焦りや不安を抱く普通の人間です。

私は普段、板前として働いています。
「板前仕事は段取り八割」、小僧の時に先輩にそう教わりました。

それでは段取りとは何でしょうか?
それは、「今取り組んでいること」と「少し先に起こるであろうこと」を繋げることだと、私は考えています。

忙しくなると、あっちこっちの仕込みやオーダーに手を付けて、その結果どれもが前に進んでいないという板前さんも、時々います。
せっかちであることと、先を読んで行動することは、似ているようで違います。

「せっかちさ」は、作業の工程から効率を奪い、成果が出るまでの歩みを遅らせてしまいます。
板前仕事も積立投資も、同様です。

©板前FP雑記帳

その先輩には、こうも言われました。
「今のままでは、お前の料理は絶対にきれいにならない」
「盛り付けを教えてくれなんて言う前に、身の回りを整理しろ」

カチンときました。
辞めてやろうかとも思いました。
それでも見返してやりたい一心で、まな板周りの道具類、ネタケースや冷蔵庫の中の配置、バットの中の食材の並べ方まで、それまでのやり方を改めました。

すると、どうなったか。
場当たり的でその場しのぎ、一つのミスの連鎖で作業が詰まることが多かった自分の仕事に、それまでにはなかった「流れ」が生まれました。
ネタの並べ方ひとつ、道具の整理の仕方ひとつでも、使う時にどう並べれば仕事がスムーズになるのか、考えているかそうでないかは雲泥の差です。
「今取り組んでいること」と「少し先に起こるであろうこと」が、少しづつ繋がり始めたのです。

あの時先輩が教えてくれたことが、今では自分の仕事の財産になっています。

これを読んでいるあなたにはカチンとくるかもしれませんが、冒頭の言葉を繰り返します。
リボの返済と積立投資は両立するべきではありません。
今すぐ、NISAの積立設定を解除してください。
それが、あなたの家計を立て直すための、最初の「段取り」です。

そしてFPとしてお約束します。
「リボ払いの返済」は「最良の投資」への道です。
毎月の返済が、将来きっとあなたの財産となって戻ってきます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

【合わせて読みたい】
・資産形成の第一歩は、家計管理から。
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・「普通の暮らし」守るための、資産形成のロードマップ。
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